湖の朝は意外と穏やかで静かなものだった。マラウィ湖は内海みたいに大きいから朝は漁に出かける船などでにぎわうのかと思っていたら、湖面に浮かぶのはカヤックほどの小舟で漁も個人でささやかに行っているような感じだった。
目覚めたばかりで未だ優しいまどろみの中にある太陽の光が湖面に張りついており、その上を小舟がすべるようにゆっくり動いている。太陽が雲を越えて昇るといよいよ本領発揮だ。オレンジの濃い光が湖面に眩く満ち溢れ小舟のシルエットがくっきり浮かび上がる。湖の向こうには入道雲がその端をオレンジに染めて立ち上がっている。湖の一日が始まる。
気付いたら自転車の後輪がパンクしている。出鼻をくじかれた気分だ。修理しているとキャンプ場のおじさんが桶に水を張って持ってきてくれた。そして一緒に修理。
沿道にはサトウキビやキャッサバ、トウモロコシが濃い緑を呈している。食べ物もそこらじゅうで売られており、そのトラップに引っかかる私はなかなか進まない。
子供たちは昨日ほど「何かちょうだい!」を言わなくなり、その代わりに「ムズング、バイバイー!」が多くなった。
途中で中学生の女の子に追いかけられて今日がバレンタインデーであることを教わった。
「今日が何の日か知ってるー?」「え?何の日?」「バレンタインデーよ!」「あぁ、そうか!」
キリスト教である彼女にとっては宗教的に意味のある日だが、クリスチャンでないどころか、宗教も商業に利用してしまう御都合主義帝国からやってきた私にとってはバレンタインデーはお菓子と恋のドキドキの日でしかない。
子供のころは密かに楽しみにしていた日も、大人になると単なる1/365でしかない。こと旅をしていると今日が何日なのかわからなくなることがあるのでなおさらだ。
彼女は今日は家族や友人と一緒に過ごすといって嬉しそうだった。一方、私は今日も一期一会の人々と過ごすことになる。旅も長くなると濃密な関係が恋しくなってくるのもまた事実。飢えた分だけ帰ってから得たいと思う。
| 写真撮って、撮ってー | 
| キャッサバ干している | 
| もうお手上げ | 
| あーアズングだー変な生き物がいるぞ | 
| コノヤロー!変な生き物だとぉ?喰っちゃる! | 
| 付いてくるなって | 
| 付いてくるなー! | 
| 午睡 | 
| 知ってるー?今日はバレンタインデーよ | 
| サトウキビ畑 | 
| なんて言うんだこれ、魚トラップ、びく? | 
| フィルムじゃないからいくらでも撮るよ! | 
| 釣れてんのかい? | 
| 川の水が入り込む場所は茶色い、奥は青いでしょ? | 
 
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