別に縦断にそこまで拘っているわけではないので、突端まで行く必要もないのだが、人間というものは隅っこがどうも好きで、あれば行きたくなってしまう。
(そもそも喜望峰はアフリカ大陸の南端ではない、アグラス岬が南端)
というわけで、泊まっているバックパッカーズをベースに行って帰ってくることにした。
往復140kmだから道が平らで風もなければ一日で帰ってこられるだろうと踏んだ。
しかし現実はなかなかすごい向かい風に加え、そこそこのアップダウン。
行きでくたばってしまった。
国立公園のゲートを通ることには「しょうがない公園内で一泊しよう。いや、せっかくのスタート地点なんだから一泊しないわけにはいかないだろう」と考えるようになっていた。
Simon's Townから先は店もなく、食べ物も飲み物もなかったので持って行ったお菓子で凌いだが、何せホームメイドのポテトチップスは油が古いせいか、食べると胃もたれのような胸焼けのような状態になるわで、ちょっと困った。
がっつり糖分を含んだクッキーが原因だったのかもしれない。
まぁどちらにせよ、食にも困っていた。
余りに腹が減ってしまったので途中でインスタントラーメンを作った。
これがまた旨いんだ。
しかも塩分も同時にとれるから最高の飯だ。
ゲートを抜けるとそこはだだっ広い平原が広がる。
黄色い花やピンクのヒース(Erica)が色づき始めている。
途中岬からやってくる自転車の夫婦に会う。
「いやぁ最高だね!」「本当に!」
「君はバッグを積んでいるけど、私はここ(大きな腹に手を当てて)にたくさん積んでいるよ!」とジョークを飛ばす。
こんなだだっ広いところではもう全てが朗らかに、明るく、澱みがない。
最高に気持ちの良い場所だった。
途中少し高くなったところに平原を見渡せるベンチが置かれていた。
一日中そこで読書したら最高だなぁ、なんて思いながらしばらくゆっくりした。
そんなこんなでケープポイントにまずは行った。
そしたらたくさんの日本の旅行客が来ており、びっくりした。
中には和装で来ているオジサマ、オバサマ方も。
しかも足袋に草履。
あまりに高貴な感じがしたので汚い格好の私は声をかけるのも憚られた。
その観光バスの一台に「憧れのアフリカ ロマンの旅」と書かれており、
そっかぁ、アフリカはいくつになっても憧れの大陸なんだなぁと感じた。
大草原や、砂漠に沈む夕日や、大地を切り裂く滝にはロマンを感じるのかぁ、と。
しかしロマンという難しいカタカナ語がいまだにわかっていない若造にはロマンを感じようがないのも事実である。
むしろ、アフリカに抱くこの感情こそがロマンなのだと、ロマンの意味を掴もうとしている。
しかしそんなオバサマ方の会話を小耳にはさんだら世間話をしているではないか!
本当にロマンとはわけのわからぬ言葉である。
観光客の4割くらいはアジア人でそのうち半分が中国人、半分が日本人であった。
恐るべしアジアパワー。
そして岬から葉書を出せるとのことだったので、昨年一緒にカラハリを旅したカナダとアメリカのオジサンに送った。昨年あなたたちと過ごしたSpringbokへこれから向かうと。
17時頃になると人も減ってきて、あたりが黄昏てくる。
そこからビバークする気満々で喜望峰へと向かう。
喜望峰へは下りなので楽ちんすいすい。
着くとバス一台に車4,5台が停まっており、Cape of Good Hopeの看板の前でかわるがわる写真を撮っていた。
私もそれに交じって撮影しようと構えると、一人のオジサンが、「俺が撮ってやる」とカメラを取り上げ、勢いよく撮ってくれた。
何人かCape of Good Hopeを目指してアフリカ縦断をしている人の話を聞いたが、Cape of Good Hopeをスタートにした人の話はあまり聞かない。
なぜみなゴールをCape of Good Hopeにするんだろう。
私も南アフリカで働いていなかったら、スタート地点にしようとはしなかっただろう。
やっぱりCape of Good Hopeはゴールにふさわしい何かがあるんだろう。
おそらく写真を撮ってくれたオジサンも「ゴール」だと思ったに違いない。
いいえ、スタートです。
18時を過ぎると公園のゲートが閉まるので、皆帰り始める。
喜望峰にはもう誰もいない。あ、ダチョウの親子が夕飯食ってる。
それでも一人だけの時間。独り占めの景色。最高に気分がいい。
寒いのは除いて。
一応、ビバークも考えていたので、夕食のラーメンと、防寒着は持ってきていた。
風の当たらぬ場所を見つけて、さっそくロングTシャツ、カッパ、セーター、ヤッケを着こんで、ラーメンを作り始める。
ホクホクラーメンを食べて、汁も全部飲んで体があったまったところで、ちょうどいい感じで撮影タイム。セカンドマジックアワー。
いつの間にか一時間くらい経って、体が冷えてきたのでやめて寝に入る。
さぁ、これからが勝負だ。
以下に風の音、寒さに打ち勝って寝るか。
山岳会で鍛えられたのもあって、比較的寒い環境でも睡眠をとれるような体質ではある。
もちろん安全に。
それでも今回のはちょっとやられた。
はじめはよかった。でも途中から風が四方八方から吹き込むようになり、岩が作っていたバリケードが意味をなさなくなって来た。
4,5時間くらい寝たところで、ギブアップ。
起きて場所を変えようと彷徨う。
ブッシュの中で寝ればベストなのだが、なにせ一度テーブルマウンテンの麓でサソリを見ているので、あまり込み入ったところでは寝たくない。
しかもあったかいところではサソリも活動できる。サソリが動けない程度寒い場所でないといけないのだ。つまり私もいくらか痛み分けをしないとダメということだ。
見つけた小さな岩に体を密着し、ザックカバーを被って再び眠りについた。
しかし一度覚めた目は次に覚めやすい。
夢と現をさまよいながら、早く日が昇らないかなぁと思って待っていた。
ぐっと力を入れて震え体を温めては「早く日昇れ」と思い、朝を待った。
6時ころケープポイントの上空が赤く色づき始めた。
来た!
ザックカバーを取り除き、まずは朝の撮影。
おはよう南極。見えないけど。
おはよう岬ちゃん
昨日買ったミックス穀物入りのケーキを白湯(そう、あろうことかティーバッグを忘れた)とともに食べ、すぐに出発。
サヨナラ一夜限りのベッド。
おはようダチョウ。朝食はいつもの草か?
おはようダシー。でも今回は隠れて出てこなかったね。(前回の時の写真)
帰りは追い風、すいすい進む。
途中、Simon's Townで朝ごはんの続きを。
前日からエネルギー不足だったので、卵三つのオムレツを。
節約のためドリンクは水道水をお願いしたら、ちゃんと冷たいし、
「朝のジュースをどうぞ」って小さなグラスに入ったフルーツジュースを出してくれた。
もうそのジュースのおいしさったらないよ。
そしてオムレツも格別。
窓から青い海を見ながら朝ごはん。
あぁ、こんなに優雅な朝食が食べられるのもこれが最後かな。なんて思いながら。
やっぱり卵パワーすごい!
みるみる力が湧いてきてあっという間にバックパッカーズに戻った。
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