ナミビアを越えた辺りから食欲の赴くまま、自制心を失ったように動いている。腹が減れば食い物を貪っている。かつてはこれだけエネルギーを消費しているのだからいいじゃないかと開き直っていた。しかしどうだろう、人として自制心のない生活はいかがなものか。いくら旅で自由だからとはいえみっともない。おそらくそんな風に自省するようになったのは、スーダンの人々の祈りによる清く倹しい生活を見ているからだろうと思う。
ただ座禅を組んでも悟りに導く者がおらぬ。これではただ苦行を積んでいるだけじゃないか。何か自分の欲を捨てる行いが必要だ。
水を飲みながら腹がグゥと鳴る、休憩時。これだ、これだ。腹減りの合図が脳に行った状態で欲望をいかに抑えるか。旅始まって以来、この合図が出ると頭の中は食い物のことでいっぱいになる。何食べよう、とか、あれがあったらいいな、とか、昨日食ったあれは美味かったなぁ、とか。もう一向抑えが効かなくなる。旅始まってからニューロンの経路がきっと新しく構築されたに違いない。人間の思考回路がエネルギー要求度によっていかに簡単に変わるか身を持って知った。
そんな脳に現れた食べ物絵巻を、如何に首尾よく畳んで収めるか。
次の休憩所まで25kmある。風がなければなんてことはない。一時間ちょいだ。しかし今日の風だと2時間半はかかる。
心に誓う。次の休憩所まで今持っているパンを断じて食べません。この意志薄弱体質の私の守護神に誓って、先述の誓いを守ります。
休憩所を出ると相変わらず熱い光線が迎えてくれる。
(次の休憩所は食堂やってるかな)
おっと、いかん。既に絵巻が広げられているぞ。
前方に500mほどの岩山が聳えている。それを左に巻いて緩やかな坂道を登る。不思議にも向かい風が強い時は上り坂の方が楽な場合がある。上り坂では坂に風が遮られて無風状態となるからだ。フラットな大地風が怨めしく思われる。あぁ、いかん、いかん!無我だ、無我にならねばならぬ。
坂を越えると再びフラットな大地を一本道が突っ切っているだけ。今朝ナイルの畔から離れたため(たった5、6km離れただけ)緑も人も住まぬ不毛の大地を走っている。やはり何かもの寂しい。
(そういやぁ、昨日ご馳走になったビーフシチューは美味かった)ああ"〜絵巻が解けてる!戻さねば。
日が傾きはしたものの熱の残渣が岩や砂から照り返り、一向に暑い。景色に山や丘が多くなる。フラットな大地に突出するそれはまるで浮島のようで、夜になると月に照らされた大地をつぃーと滑るんじゃなかろうかとすら思えてくる。アスファルトの黒いラインはその浮島の間を縫うように流れ、僅かに上り下りはあるものの相変わらずフラットを保つ。
山は黒っぽい礫がまぶされ、薄いベージュの砂地にグラデーションを引く。大地にも車ほどの大きな岩がゴロゴロと無造作に転がり、一瞬ここが地球ではないのではないか、と楽しくなる。しかし次の瞬間、火星に行っても一日で飽きるなと思う。目の前の砂礫に覆われた山は殺伐としている。生き物のいない山に登りたいとは思えない。しかしあれに登ると世界はどう見えるのかは気になる。
(あの山はパンケーキみたいだ。あっちはココアパウダーをまぶしたチョコレートケーキ。Mont Chocolatと名付けよう)ごゎっ、また絵巻がぁー!煩悩を捨て去る道は遠い。
腹の虫が忙しそうになると腹式呼吸。不思議にも腹式呼吸をすると腹の虫はどっかに隠れる。恨めしそうにずっと伸びる道路を睨み、腹式呼吸。漕ぐことに集中。しばし絵巻はしまわれしなり。
残り5km。あれ意外に早く着くな。2時間くらいかな。と、その時後ろから私を拔いた車が脇に停まった。中年の男がスマートフォンを持ってにこやかに出てきた。「どこへ行く?どこから来た?日本?トヨォータ!日本は最高だよ!写真撮っていいか?(もう撮ってますが、、、)」など質問攻めだ。彼らもこれからワディ・ハルファへ行きエジプトへ渡ると言う。休暇か何かだろう。一族総出と見えて、トヨタのランドクルーザーが4台ほど続いてやってきた。
私の修行は一時中断された。しかもおじさん「パンいるか?」って、そんなもの今の私に見せるなー!ちゃっかり頂くところが、未ダ未ダ私ハ煩悩ノ塊デアル。しかし他にも色々くれようとしたのは丁重にお断りした。修行の身なもので。
残り3km。(パンに何つけて食べよう。蜂蜜かごまペーストしかないけれど)腹式呼吸!集中。
残り2km。休憩所の建物が見えてきた。(食堂やってないかなー、フルー(スーダンのナショナルフードでソラマメを煮込んだシチューでピーナッツオイルやカッテージチーズをかけてパンに付けて食べる)食べたいなぁ)これはもうペナルティだ。休憩所に着いても一分間瞑想、反省。
休憩所。一人迷彩服の男がいるだけ。どうやら今日は休日のようだ。残念。約束通り一分間のお預け。
そうしてようやくごまペースト付けた美味しいパンを食べることが出来たのでした。
修行の道のりはまだまだ長い。
そんな脳に現れた食べ物絵巻を、如何に首尾よく畳んで収めるか。
次の休憩所まで25kmある。風がなければなんてことはない。一時間ちょいだ。しかし今日の風だと2時間半はかかる。
心に誓う。次の休憩所まで今持っているパンを断じて食べません。この意志薄弱体質の私の守護神に誓って、先述の誓いを守ります。
休憩所を出ると相変わらず熱い光線が迎えてくれる。
(次の休憩所は食堂やってるかな)
おっと、いかん。既に絵巻が広げられているぞ。
前方に500mほどの岩山が聳えている。それを左に巻いて緩やかな坂道を登る。不思議にも向かい風が強い時は上り坂の方が楽な場合がある。上り坂では坂に風が遮られて無風状態となるからだ。フラットな大地風が怨めしく思われる。あぁ、いかん、いかん!無我だ、無我にならねばならぬ。
坂を越えると再びフラットな大地を一本道が突っ切っているだけ。今朝ナイルの畔から離れたため(たった5、6km離れただけ)緑も人も住まぬ不毛の大地を走っている。やはり何かもの寂しい。
(そういやぁ、昨日ご馳走になったビーフシチューは美味かった)ああ"〜絵巻が解けてる!戻さねば。
日が傾きはしたものの熱の残渣が岩や砂から照り返り、一向に暑い。景色に山や丘が多くなる。フラットな大地に突出するそれはまるで浮島のようで、夜になると月に照らされた大地をつぃーと滑るんじゃなかろうかとすら思えてくる。アスファルトの黒いラインはその浮島の間を縫うように流れ、僅かに上り下りはあるものの相変わらずフラットを保つ。
山は黒っぽい礫がまぶされ、薄いベージュの砂地にグラデーションを引く。大地にも車ほどの大きな岩がゴロゴロと無造作に転がり、一瞬ここが地球ではないのではないか、と楽しくなる。しかし次の瞬間、火星に行っても一日で飽きるなと思う。目の前の砂礫に覆われた山は殺伐としている。生き物のいない山に登りたいとは思えない。しかしあれに登ると世界はどう見えるのかは気になる。
(あの山はパンケーキみたいだ。あっちはココアパウダーをまぶしたチョコレートケーキ。Mont Chocolatと名付けよう)ごゎっ、また絵巻がぁー!煩悩を捨て去る道は遠い。
腹の虫が忙しそうになると腹式呼吸。不思議にも腹式呼吸をすると腹の虫はどっかに隠れる。恨めしそうにずっと伸びる道路を睨み、腹式呼吸。漕ぐことに集中。しばし絵巻はしまわれしなり。
残り5km。あれ意外に早く着くな。2時間くらいかな。と、その時後ろから私を拔いた車が脇に停まった。中年の男がスマートフォンを持ってにこやかに出てきた。「どこへ行く?どこから来た?日本?トヨォータ!日本は最高だよ!写真撮っていいか?(もう撮ってますが、、、)」など質問攻めだ。彼らもこれからワディ・ハルファへ行きエジプトへ渡ると言う。休暇か何かだろう。一族総出と見えて、トヨタのランドクルーザーが4台ほど続いてやってきた。
私の修行は一時中断された。しかもおじさん「パンいるか?」って、そんなもの今の私に見せるなー!ちゃっかり頂くところが、未ダ未ダ私ハ煩悩ノ塊デアル。しかし他にも色々くれようとしたのは丁重にお断りした。修行の身なもので。
残り3km。(パンに何つけて食べよう。蜂蜜かごまペーストしかないけれど)腹式呼吸!集中。
残り2km。休憩所の建物が見えてきた。(食堂やってないかなー、フルー(スーダンのナショナルフードでソラマメを煮込んだシチューでピーナッツオイルやカッテージチーズをかけてパンに付けて食べる)食べたいなぁ)これはもうペナルティだ。休憩所に着いても一分間瞑想、反省。
休憩所。一人迷彩服の男がいるだけ。どうやら今日は休日のようだ。残念。約束通り一分間のお預け。
そうしてようやくごまペースト付けた美味しいパンを食べることが出来たのでした。
修行の道のりはまだまだ長い。
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