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Africa!

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2014年10月3日金曜日

1003 砂漠でマカロニ食べるとヤケドするワケ

死んだように冷めた色の砂がサラサラと積もった砂の上を走る。今朝は涼しく気持ちの良い朝だった。昨晩中ずっと西寄りの北風が吹いていたが、全く奴らは良くもまぁ尽きずに吹き続けられると感心する。昨日十分に吹き尽くしたから今日はもう風も吹かないかな、あわよくば逆の風が吹かんか、と期待したが期待はハズレた。今日も北西の強風健在なり。
昔、それもまだ気圧や大気循環の概念がまだない頃、ヌビアの人々は不思議だったに違いない。無尽蔵に吹くこの風はどこからやってくるのか。水やものは尽きてしまうのに、なぜ風は尽きぬ。しかも彼らは戻りもせぬ。
この調子だと今日中にドンゴーラに着けない。更に砂漠で一泊するとなると水がもたない。完全に読み誤った。カリマからドンゴーラへの道は他の道とは違う。全く人が住んでいない。これはやられた!
水欠乏の不安を抱えながら走っていると、なんと!木々が生い茂るオアシスが!どうやら野心的な農家が砂漠の真ん中で酪農を始めていたようだった。水タンクがあり、水瓶ももちろんある。ステンレスのマイカップで冷えた亀の水を頂いた。旨い!水不足に備え水分摂取を控えていただけに、いつもに増して旨いぞ!少し瓶臭があるがこれも水の個性でなんてことはない。5リットルほど水を補給して出発。あぁ、十分な水があるってこんなにも心強いんだなぁ。ちょっと誇張して書くとエジプトを陥落せしめた時のアレクサンドロス大王の心境に近いかもしれぬ。何でもかかってこい。そんな心持ちだ。
とは言ったものの、この風にはまいる。自分の努力に対する結果が思ったもの以下だった場合、人は精神的に疲れる。また道が見た目はフラットでちっとも辛そうじゃないから尚更たちが悪い。こいでも、こいでも、こいでも、、、この旅で何度か筋肉疲れたなーってなった事はあるが、今回が一番重いかもしれない。暑さといい、まさかここまで来てまだ修行があったとは。不覚だった。
黙って漕げ、漕いでりゃいつかは着く。文句を垂れても誰もおらん。黙々と漕ぐしかないのだ。
暑さで少し眩暈が。午睡。しかし建造物も木もないので陰を得られぬ。仕方なしに自転車の影に頭だけ入れて寝る。首に水、風があるので気持ちいい。あっという間に眠りに落ちた。
足の上に石のような迷彩色のトカゲがちょこん。愛らしいがごわっとした肌触りで目が覚める。やぁ。飛ぶもの以外の生き物にここで出会ったのは君が初めてだ。嬉しいから水でも飲むかい?ちょろっと頭にかけてやったが瞬きしただけ。省エネ戦略の小人さん、腹が膨らんでるからきっと旨いものを食った後で動くのか億劫なんだろう。
気分良くなりもう人踏ん張り。ドンゴーラの手前にカワ遺跡がある。そこまで行けたら遺跡で眠ってやろう。風にめげずに走る、いやもう歩く速さだな。蛋白石の空を鳥が一羽横切る。今日も太陽とはお別れだ。
道が南西に向いた。追い風。来た!久しぶりの爽快。速い、速い。車輪が自分で転がってくれる歓び。それでこそ自転車。束の間の快走は終わり辺りが暗くなってきた。遺跡眠りは諦めて電波塔の脇に寝床を取る。遠くの方に一つ明かりが見える。遺跡辺りだろうか。暗くなって見たら1キロ先の地平に光の列が瞬いていた。なんだすぐそこに町があるじゃないか。
今日はインスタントラーメンにマカロニ追加でイワシの缶詰。ナミビアでもそうだったが、砂漠では口の中をよく火傷する。普段はそんな事ないのにどうしてだろう、と思っていたが分かった。ポイントは気化熱だ。砂漠は乾燥しているため、水分がよく蒸発し気化熱とし て熱が奪われる。素焼きの水瓶の水が冷たいのもこの原理を用いたものだ。素焼きは少しずつ水を通すのでそれによって水の入った瓶はいつも表面が湿った状態になっている。それが蒸発し瓶を冷やすから瓶の水は冷たい。全くありがたい原理だ。スーダンでは水の気化熱を使った簡易クーラーもよく利用されている。私も砂漠では走り終わってすぐやるのは、手拭いをぬらし水ボトルに巻くこと。こうすることで後で冷たい水を飲めるのだ。本当に驚くほど冷たくなる。
さて話を火傷に戻そう。
熱々のスパゲッティやマカロニは口に入れる前にフーフーっと息で冷ます。この時気化熱が奪われマカロニの表面が冷まされる。砂漠では気化熱の奪われ方が急激である。そのため表面が冷めているので熱伝導のための時間が十分取られる前に口に運ばれる。つまりマカロニ内部はまだ熱い状態だ。表面は十分冷めているので唇や舌のファーストインプレッションは「あ、いける」だ。口内は熱いもの対応の準備をしない。ところがどっこい。噛んでみると予想外に熱いのだ。口内の各パーツは準備ができていない状態で熱いものを放り込まれたと同じ状態に陥る。普段気化熱によるマカロニ表面の温度低下が緩やかな場合、熱伝導で内部が冷やされる十分な時間があるため、口に入れてもマカロニ内部もすでに冷めているので火傷をしない。または表面が十分に冷めていなくとも、口内が熱いものが来たと構えるので火傷しない。
まとめると砂漠のマカロニで火傷する主な原因は内外の温度差が大きくなるからだ。そしてその温度差は気化熱による冷却効率の高い乾燥した砂漠においてより顕著になる。
砂漠の真ん中で私は何を書いているんだ。まったく、ロマンはどこへ行った。

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