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Africa!

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2013年10月24日木曜日

風呂に入りたい

Aussenkehr → National Park Gate → CampSite(70km from Aussenkehr)


キャンプ場から幹線道路に出る道沿いにはずっとぶどう畑が続く。

朝の光を浴びてますます美しい。
ぶどうの樹が作る日陰では働く人の話し声が聞こえてくる。


オーッセンカーの農場で働く人々が住む地域を左手に登りと下りを繰り返していく。
家々は壁も屋根も茅葺である。その様は勝手に私が思い描いていた「アフリカ」の印象と重なった(印象なんてものは本当に勝手だと思う)。


砂埃が舞う道路を鮮やかな色の布を羽織った一人の少女が横切った。

「写真を撮らせて」とお願いするが言葉が通じないため怪訝そうな様子だ。
身振り手振りで伝えると、はにかみながらもこちらを向いてくれた。
皆が働きに出払っていた町は静まり返っていて不気味だったが、よーく耳を澄ますと遠くで大勢の子供の声がする。
学校があるのだろう。

あの緑あふれるぶどう園のプロジェクトはこのようにナミビアでの大きな雇用も生み出していた。
つましい暮らしを見ると、彼らの賃金は決していいものではないであろう。
しかし、強い日差しを遮る緑のぶどう棚の下からは笑い声や話し声が聞こえてきて、とても楽しそうに仕事をしていた。
話しかけると言葉があまり通じないため、ニコニコ笑いながらぶどうの葉や枝に手を動かしている。
町の誰もがお金持ちではなく、貧乏でもなく、同じような茅葺屋根の家で暮らす。
それはそれで一つの幸せの形なのかもしれないと思った。



オレンジ川沿いの峡谷をゆくのだが、景色は圧巻だ。
何十億年の造形に息をのむ。


水による風化が少なく、気温の日較差によって破砕されると思われ、岩石はすべて尖って険しい。
容赦のない強い光を黒い岩肌が鈍く反射し、強烈なコントラスが作られる。

しばらくオレンジ川から離れる道になる。

先ほど右手に見ていた岩山へ分け入っていくのだ。
もちろん登りもなかなかきつい。
余りの上りに二日以内にRosh Pinahに着けるか心配になってくる。
着けないと水が厳しくなる。

一か所余りの急登に自転車を降りて押す。
砂溜まりもあり、苦労する。
Aussenkehrから36kmくらいで峠を越えたようで、そこから一気に下る。
その下りは爽快で、心なしかパワーが出てきた。
オレンジ川に再び合流すると、視界に緑が再び入ってくる。
頭の茶色い山羊が道を横断している。
遅れた子ヤギがめぇ、めぇ言って必死になって追っかけていく。
白人一人と黒人二人で営んでいる農場だ。
スイカも育てていると話していた。涎が出た。
山羊を追っかけていた青年に話しかける。

「ここでの暮らしていると食べ物はどうしているの?水は?」
と聞くと、ニコニコしながら、
「食べ物は野菜がここで採れるし、肉も山羊がいる。水もオレンジ川の水を飲んでいる」
と答えた。自給自足の暮らしだ。
農場を挟んで道の向こう側には小さな小屋があり、そこが彼の家なのだろう。
彼はとても満足そうでとても穏やかな顔をしていた。
話していると突然先ほど話したオーナーのおじさんが、その青年に遠くから何かを叫んでいた。
すると青年は農場を横切ってかけていき群れから離れた山羊を追っかけていた。
なんだかのんびりしているなぁ、と思った。
でもこんなところで農場なんてすごいなぁ、というかどこに収穫されたものを持っていくのだろうか?
たしかにあのオーナーのおじさんは挨拶しても無視という風に、少し世離れした感じがしたからなぁ。
それでも別れ際には不器用な感じで、「まぁ旅を楽しめ」と言ってくれた。
今考えるともっといろんな話をしたかったなぁ、と思う。

農場以降は川沿いに平らな道を行く。
途中ダイヤモンド鉱山の管理事務所があった。
そこから3kmくらいのところに平原があったのでそこをテン場にした。

これを独り占めだぃ!
テントを張り、周りの植物を見て散歩してから、せっかくだからオレンジ川に水浴びに行こうと思い立った。
広い平原を歩いて川に向かっている間、なぜだかふと松本の下宿に住んでいた時に通っていた風呂への道を思い出した。
水田に水が張られてしばらくするとカエルが鳴き出すあの暗い道。
夏は涼しく、冬は濡れた髪が凍るほどに寒いあの道。

そんなことを考えながら川縁に行くと、なんとツタの絡み合ったブッシュが。。。
しかもいろんな動物様のおうんち殿が散らばっている。
ウシやらシカやらイノシシの類だろうと思う。
何とかそれを潜り抜け、川が見えてくるも、今度は崖になっている。
あきらめた。
堕ちて這い上がれなくなったら笑えないと思って。

その帰り道、またふと松本の風呂を思い出す。
そういえばあの時も、バイトを終えて汗だくで風呂に行ってみると、
もう掃除のおばちゃんが来ていて時間切れで入れなかったなぁ。。。
その時の気分と同じようでなぜか一人笑ってしまった。
荒原の枯草が風にたなびいて私の憐れな姿を朗らかに笑い飛ばしているようだ。
そんなことで落ち込むなよぉ!と。
大丈夫、落ち込んではいない。ちょっとがっかりしただけさ。


風は強かったが、これを書いているときはだいぶ弱くなってきており、星がきれいだ。

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