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Africa!

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2014年8月5日火曜日

0805 出鼻挫き

オランダ自転車乗りロバート、宿のおっちゃん、おばちゃん、姉ちゃんに別れを告げて、40km先のThikaズィカまで行こうとナイロビの街に躍り出た。ところがチェーンが切れた。このチェーンはナイロビにある正規品を売るサイクルショップでつい先日交換してもらったものだった。
件のサイクルショップはインド系ケニア人がオーナーでシンガポールから輸入している所謂「オリジナル」と呼ばれる正規品を扱ってる店だ。彼と長年パートナーとして働くメカニックはアフリカンのケニア人だ。
私のスプロケット(後輪に付いているギヤプレートの塊)はマラウィでインド製の怪しげなものを無理やり調整して利用していたのだが、ケニアに入ってから再び歯飛びするようになっており、山国エチオピアに備えて替える必要があった。この店でシマノの純正品があった。購入する際、箱に入っていないものを出されたので「これ本物か?」と聞くと「本物だ、場所の都合で箱から出しているだけだ」と言われ一応トップの留め具にShimanoとあったのを確認できたので購入して宿へ帰った。そしてルンルン気分で嵌めてみるとなんと合わない。原因はトップから二番目のプレートの厚みが違うことだった。早速クレームをつけに店へ。自転車ごと乗り込んでいった。そして商品を箱に入っている奴に変えてもらうときっちりり嵌った。分かれているトップ二枚のプレートが違うものだったのだ。金属の色が微妙に違ったので大丈夫かなと思ったら案の定。彼が意図したものなのかは定かではなかったが、彼の対応が「出荷時に間違われたもので、私に非は無い」といった風だったので些か腹立たしかったが、その時は交換した物がちゃんとしたものだったので良しとした。
折角だからチェーンも変えちゃおうという事で「2分で終わる」という彼の意気込みを買ってメカニックに替えてもらった。今までのアフリカの自転車屋はハンマーでカンカンやってしまうのが常だったので心配だったが、ここは純正品を扱っているし、チェーンチェンジくらいならさほど問題ないだろう、と思いお願いした。
ところがどっこい、彼のチェーンカッターときたら半分壊れかかっており、ピンが真っ直ぐに入っていかず苦戦している。それがうまく行かないと知るやペンチでジョイントピンを押し込み始めた。「チョッ!待てぃ!そんなことしたらチェーンが歪む!」かと言って私は道具をキャンプ場に置いてきてしまった。商品のチェーンカッターを新たに下ろしてもらって途中から代わったが既にチェーンリンクが歪んでしまっており、なんとか繋がったが心配が残った。本来はこの時点でチェーンの交換を要求するべきだったが、その程度のちょっとした歪みが問題になるとは考えなかった素人の私は良しとしてしまった。その時はそれで乗って帰った。
そしてナイロビを発つ日。その歪みがギヤチェンジ時に引っかかり、ナイロビの中心で切れた。とにかく忙しく道行く人々の流れの隅っこに、こぢんまりとこずんで切れたチェーンを繋ぎ直した。切れた部分のリンクは歪んで使い物にならなかったので取り除いて、本来の長さよりも短い状態だ。ナイロビからだいぶ離れて切れていたら、これでそのまま行っただろう。しかしナイロビ市内である上、高い金出してせっかく純正品を付けたのに欠陥品というのは納得行かない。
正直交渉して半々までいければいいかなくらいに思っていた。何せその場で代わって作業して良しとしてしまったから、私にも非がある。
しかし一度スプロケットでイカン物を渡した店主への不満もあってついつい勢い良く乗り込んでいってしまった。
交渉の条件。怒らせてはいけない、怒ってはいけない。冗談っぽく「おいおい、またやられたよ」くらいな気持ちに直前で切り替えて乗りこんだら、店主も「また君か」ってな様子で他の客で忙しいふりして私を一瞥した。私はまるで迷惑なクレーマーにでもなったようだった。しかしここは引き下がれない。半額はそっちで持ってもらおうか、ということで交渉。はじめ彼は案の定、最終的に処置して良しとしたんだから私は知らんよ、と強気だ。そんな言い訳ははじめから予想済みだ。そのくらいじゃ引き下がりませんぜ。「君のメカニックのチェーンカッターは壊れていた、それを認めて新しいのを下ろしたんじゃないか。しかもピンが入らんってなって、ペンチで押し込んでいる時点でおかしいじゃないか。それはプロとしてどうなの?」と反論。すると彼は「それはアンタが見ていたからメカニックは緊張してうまくできなかったのだ。君が見ていなければよかった」「人に見られて緊張するのがプロなのか?あなたが言うプロはその程度なのか?」「彼は毎日チェーンチェンジをしているが今までこんなことは無かった、君のが特別だったのだ」「嘗てあったかどうかは客としてはどうでもいい事で、現にペンチで歪められたチェーンを使ったから切れた、あそこでペンチを使わなければ歪まなかった」そんな押し問答をしばらく続けた結果、彼は言った。「分かった、新しいのをやる。その代わり自分で全部やってくれよ、もう」と言った。歪められたチェーンは別の機会に売れるし、一人の旅行客にそこまで時間を使ってられないと思ったのか彼は諦めた。意外と言ってみるもんである。私も出来た人間ならチェーンの1つや2つ買ってやると言ってやりたいところだが、生憎余裕がないもんで、必死です。小さな人間と見られようとそこは引けません。私も随分と堕ちました。今は針地獄一丁目と言ったところだろうか。
そんな激しいせめぎあいの後も店主は「チェーンの長さを以前使っていたものに合わせたほうがいい」と横でアドバイスしてくれたり(チェーン長は以前のものに合わせるのもひとつの手だが、伸びていた場合にはダメ、ギヤをローとアウターにして合わせるのが一般的?)、気を遣ってくれた。そして「これで君もHappyになれたか?」とまで聞いて握手して別れた。
技術は日本に比べたら未熟だが、彼らもプロの意識を持って働いている。それを傷つけたくないし、尊重したいとは思う。しかしこっちもお金を払っている以上満足したい。そのせめぎ合いが今回のような形で現れただけ。
おっちゃん、俺はメチャクチャ、ハッピーだでね。この勢いがあればケニアはひとっ飛びだよ。ありがとう。商売繁盛を願っているよ。

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