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Africa!

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2013年10月1日火曜日

浸食される文化

私の同僚だったパセリと仲の良かった生徒シブにSEXPOに行ったことを伝えた。
ヨハネスブルグから遠く離れた地に住む二人はSEXPOの存在を知らなかった。
まるで別世界のことのように驚いていた。

SEXをそのように扱うのは本来のアフリカ文化ではタブーとされているという。
あれは西欧文化の影響だと。

南アフリカの田舎ではエイズ罹患や妊娠の低年齢化が進んでいる。
パセリから聞いた話なので正確な数字ではないかもしれないが、彼の体験を紹介したい。

彼はリンポポ大学というローカルな大学に通っていたことがある。
初めてそこに行ったときにとても衝撃を受けたそうだ。
2/3の女生徒が妊娠していたというのだ。
道行く女性のおなかが殆ど膨らんでいたと。
確かに南アの女性はふくよかでたいてい妊娠しているように見えるが、
おなかの膨らみ方が違うのでそれはわかる。
近くの高校も同じく2/3弱の生徒が妊娠しているのだそうだ。
それと同時に我々が赴任している任地に限ると、妊産婦エイズ罹患率は50%にも上る。

これらの問題は極めて深刻だ。
人生の早い段階での妊娠は、学業を中断させ女性の社会進出を妨げるし、
エイズ罹患率の増加は労働力の減少や、医療支出を増加させ財政を圧迫する。

では何が問題か。
彼らの文化か?
いや、文化ではなく変わろうとしているその度合いなのではないか、と思う。

たとえば一夫多妻制がエイズ蔓延を促進していると言われている。
確かにそういった側面もあるが、かつてのように閉じられた結婚制度であれば蔓延はしなかった。
アパルトヘイト時代の離れて暮らす夫婦のスタイルが、現在の開いたパートナー関係を作っているというのを読んだことがある。
それによって閉じられていた性的関係が、開かれたものとなり、エイズ蔓延をもたらした。

妊娠の低年齢化の問題ももともとあったしきたりや文化の変更が影響している。
そもそも昔は寿命自体も短く、むしろある程度、低年齢で子供を産むことが望ましかった。
しかし、
「女性も男性と同じく(経済)社会に組み込まれるべきで、そのためには学業を修めなければならない」
といった価値観のもとでは妊娠の低年齢化は極めて不都合である。

また、かつては栄養状態が悪く、そう簡単には妊娠することはなかったとパセリは言う。
しかも男性は学生くらいの年齢の時は、タンパク質を多量にとることを許されておらず、
それによってある程度繁殖能力も抑えられていたのだと。。。
しかし今は食べ物の西洋化で肉類、乳製品が溢れており、いつでもだれでも摂取可能である。

どこまで栄養状態で生殖能力が抑えられるのかは、定かではないが、
そこに根付いている問題には、そこに根付く解決策があるのかもしれない。
宗教のタブーがその代わりとなっている場合も少なくない。

意外と他からの影響がなければ南アフリカの諸々の問題は比較的穏やかなものだったのかもしれない。
日本も鎖国時代の江戸から開国された明治にかけてものすごい変革を強いられた。
変化の程度や、入ってきたものを改変して自分達独自の形にしてしまうという国民性が幸いして、
現在の南アフリカほどの困難さはなかったように見える。
これだけ変化の激しい時代に、日本の明治時代のような変革を強いられているアフリカ諸国は、自国の文化や慣習を守ることがとても難しいのではないだろうか。



パセリが伝統的な主食パップを作る。
最近はフライドポテトやフライドチキンなどのファーストフードが増えてきた。
それでもやっぱりパップは根強い人気がある。



2013年9月30日月曜日

再会

Hazyviewに地図とメフロキン(マラリア予防薬)を買いに行く。
いつも言っていたモールとは少し離れたところに、インターネットが使える本屋があったのでまずはそこへ行ってみる。
そこはきれいな庭とベンチが置かれていたりして、私が働いていた場所とは雰囲気がまったく異なる。
白人が多くおり、かつてかかった歯医者もある場所だ。
異空間であるそこはどこかよそよそしい。
挨拶をしても白けているというか、返事がなかったりさらりと返されたり。
一見オアシスのように見えるが、私はあまりそこが好きではなかったので、協力隊時代は殆ど行かなかった。
今回インターネットを使いたいために行ってみたが、現在は残念ながら使えなかった。
しかし、その本屋でいい地図を見つけたので買った。
これから行く南部アフリカと東アフリカの道路地図だ。
情報は細かくないが、一つ全体を俯瞰できるものがあると便利だと思い購入。

次によく行っていたにぎやかなモールに行く。
モールを歩いているとかつて教えていた生徒に遭遇!
これだけ人がいるからいて当然か、とも思うが嬉しくなった。
よく一緒に昼ご飯を食べたり、洗濯をしてくれたムプミちゃんとも会い、後で学校に来るという話になった。

モールへ来た目的を忘れちゃいかん。
メフロキンを買いに来たのだ。
薬局に行って聞くと薬剤師と思しきオジサンがすぐに出してくれた。
Mefliam(Mephloquin 250mg)というものでR132(1300円くらい)で買えた。
日本で買ったらMephloquin含有量が同じで9000円だったから、南アで買った方が得だ。
もちろん高い方は日本の製薬会社が作ったもので、南アで買ったものとは添加物が異なり、副作用を抑えてくれたりなどあるのかもしれないが。。。

用事を済まして帰ろうとミニバス乗り場に行くが、案の定まだ学校行きのミニバスは復活していなかった。
(隊員時代に利用していたミニバスが忽然と乗り場から消え、別の場所から出発するようになっていた。組合ともめて追い出されたのだろう)
ちょっと離れた乗り場まで行く。
その間、雑多な市場を通り抜けていくのだが、その一角から私に挨拶をする声が聞こえた。
何度か座り込んで話し込んだLindyおばさんだ。
彼女はその市場で野菜やナッツを売り生計を立てている。
三人の子どものうち二人はもう独り立ちし、仕事を持っている。
ここの多くの女性がそうであるように彼女も夫がいない。
シングルマザーだ。

その彼女はこの商売でコツコツと三人の子どもを育てたことを誇りに思っている。
彼女が別れ際に言った「私の子供たちを置いて行ってしまうの?」という言葉が印象的であった。
彼女の言う「私の子供たち」というのは実際の彼女の子どものことを言っているのではない。
南アフリカの子供たちのことを指している。 
自分の子供ですら親に預けて自分は新しい男と戯れる(女性が子供を多く残そうとしたら最善の方法かもしれない)という女性を働いていた場所で数多く見てきたので、
自分の子どもだけでなく、南アフリカの子供に思いを寄せる彼女の言葉がとても印象的だったのだ。

私が彼女の話を日本の人にネットで書きたいんだけど、いいかな?と聞いたときに、
「どうして名前も知らない私なんかのことを書きたいの」と聞いてきたので、
「いやぁ、名前は知っているよ、かつて教えてくれたでしょ?Lindyでしょ?」と言うと大きな体を揺らして喜んでくれた。
今は足を怪我してうまく歩けないようだが、かつては彼女のこんもりした山のような背中にひょいっと乗っけられ、三人の子どもが育てられた。
私がいろんな意味を込めてGreat South African Mamaだね!というと、また誇らしげに笑っていた。

学校に戻って次は、私が少しかかわりのあったコミュニティーのリーダー格の女性Ireneさんに会いに行った。
しかし外出中でいなかった。彼女はいろいろやっていて忙しい。
会う約束をしても時間通りに会えた例がない。
今回は電話番号をなくしてしまっていたので、アポすら取れずに会おうとしていた。
それを会えると思ったのが無理な話だ。
しかしもう一人の聡明な女性Virginiaさんとは会うことができた。

彼女曰く、Ireneさんはコミュニティの議員になったようで毎日忙しいのだという。
以前から公平な選挙が行われないと嘆いていた状況が少し変わったようだ。
念願の議席を勝ち取ったのだ。
そしてVirginiaさんは看護師になるために再び学校に行くという。
今年32歳になる息子が学費を払って入れてくれるのだと嬉しそうだった。
「え!?Virginiaさんいくつ?」と聞くと、45歳だという。
「だよね、ってことはいくつの時の子!?」
「そう、14歳の時なのよ。早いでしょう?ふふ」
「そっかぁ、その二倍も生きている俺はまだ子供なしだよwというかWifeもいないよ!」
もう家にいるのが退屈で退屈でしょうがなのだという。
そういえばフェンス越しに住んでいた女性Innocentさんも、子どもが学校に行きはじめたら私も学校に行く。と言っていたのを思い出した。
既成概念にとらわれず、いつでも学びのチャンスがあるのは南アフリカのいいところかもしれない。

そしていつもちょっと酔っぱらっているDumisaniおじさんは、商売もうまくいっているらしく、相変わらず店は若い男の子に任せて、少し酒のにおいを漂わせていた。
今日はいつもよりも酔いが強いらしく、言っていることをあまり解せない。
それでも再会できたことをお互い喜び「達者でね」と言って別れた。

学校に戻るとムプミちゃんが来てくれ、再会を喜ぶも束の間、パセリが入ってきて浮気の話や一夫多妻制の話で盛り上がる。
一夫多妻は許せても一妻多夫は許せないパセリに「それは男のジェラシーではないのか?」と言ったら、はじめはそれは違うと否定されたが、女であるムプミも加わり、パセリは落ちた。