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Africa!

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2014年11月19日水曜日

1119 ただいま日本

帰国してからまだ時差ボケがあるせいか、朝五時に目が覚めた。
頭がさえ始めてしまって二度寝ができなかったので、冷たい空気、暗い中、走り出した。
昨日日本に着いたのは日が沈んでからだったので、なんだかまだ実感がなかった。日本にいるという。
それが走りながら陸橋を渡るあたりで空が白み始めて、日本の街が露わになってきた。
直線や規則的なカーブであふれる日本の街。
おはよう、日本。そしてただいま。またよろしくね。
つい、すれ違う人すれ違う人に「おはようございます」と言ってしまう。
訝しがんで無視する人、訝しみながらも返してくれる人、普通に返してくれる人。
この時間、まだ通勤する人も疎らだ。僅かに見かける通勤者はどこか沈んだ顔を地面に向けて歩いている。
それを見ながら朝の苦手な私は思った。
日常の朝ってのは辛いんだよなぁ。わかる。もう少し寝ていたかった、といつも思っていたから。
私はまだ日常を模索中で、しかも街のものすべてが新鮮できっとまだ旅をしている顔だったろうと思う。

公園を通る。
「ラジオ体操集合場所」の看板。周りには石畳と芝生しかない。殺風景。
そういえば行く前からあったけど、一度もラジオ体操をやっているのを見たことないな。いつも夕方走っていたから。
こんな小さな看板で何もない場所に人は集まってくるのだろうか。ラジオ体操をするためだけに。まぁ夏休みの間だけだろう。

公園の木々はすっかり息をひそめ、常緑樹はどことなく暗く眠っているようだ。その中で、
銀杏の樹だけが鮮やかな黄色の葉を地面に落として明るかった。

公園を抜けて駅を越え、住宅街を海に向かって走る。
朝の散歩に出ている人がちらほら出てきた。
街路樹のユリノキのいくつかはすっかり葉を落とし、裸の樹が寒そうに並んでいる。
何か違和感。
ユリノキが落としたはずの落ち葉が地面に一枚も落ちていない。
そういえばアフリカでは常識だった道に散らばったゴミが見当たらない。
少し探すと、ぺしゃんこに踏みつぶされたたばこの吸い殻が一つ。
どなたがこんなにきれいな道路を維持しているんだ。その労に乾杯だ。
でも、落ち葉は少し残してもらえると秋をもう少し楽しめるのにな。
それに木々も寂しかろ。落としたそばから鑑賞もされずにとっとと片付けられてしまっては。

空いた空間にちょっとしたサッカーコート。
道路との間に植えられた桜の木は赤と黄色の葉を芝生に落としていた。
一瞬、湿った空気に桜の葉の香りを見つけた。
お、桜の香りが潜んでいるぞ。
匂いを探しに木の下を走るがもう見つけられなかった。

ヒメツルソバが街路樹の足元で逞しく花を咲かせている。
この時期もけなげに花を咲かせて、、、と思ったらニシキギのピンク、山茶花のピンク。
あら、ずいぶん咲いている。ピンクがずいぶん元気いい。

海に着くとランナーやウォーカーがたくさんいてにぎわっていた。東京湾を挟んで山が見える。丹沢のあたりだろうか。
残念ながら富士山は見られなかったが、何ともすがすがしい景色だった。

戻りの道すがら、無機質な団地の建物の一部が橙に染まる。
あの無機質な中に有機的な人々との生活があるのだから面白い。
スーダンやエジプトでは日の出から日の入りまで追っかけた太陽が、ここでも見られる。
十何階もある高い建物の間を抜けてきたオレンジの光が、私の走る道路を交差している。
やぁ、ありがたや、ありがたや、太陽や日本でもよろしくね。

そうして帰ってから白くて艶やかなごはんと、白い湯気を昇らせる味噌汁を食べた。
日本での生活の始まりだ。



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