ほとんど毎日宿を取っていたエチオピアから一転、スーダンでは星空の下が宿となった。まだ雨期なのでスーダンといえども雨が降る。
スーダンは2011年にハルツームを首都とするイスラム教の人々を主体にするスーダン共和国と、ジュバを首都とする伝統宗教並びにキリスト教を信仰する人々の国南スーダン共和国に分かれた。宗教だけではなく、気候も両者で全然違う。ウガンダに接する南スーダンは熱帯気候で雨期になると湿地のような大地になり、緑も豊富だ。一方北のスーダンはハルツーム以南を除いて、ほぼ砂漠気候である。植物もナイル川沿いに群がって生えるのみで、ナイルから離れたら最後、殆どの生き物は生きていかれない。
現在走っているのはハルツームよりも南の比較的緑豊かなところ。道の両側に広がる大地がトウモロコシやモロコシ(ソルガム)、ゴマや豆(スーダン料理の豆シチューに使われるソラマメ)の緑で果てなく覆われている。
ロバに乗った親子が道のわきを通り、緑のモロコシ畑に消えていった。鍬を肩に担いで、どこかで水を汲むための黄色いポリタンクを持っている。こんな広大な畑を機械を使わずに手で耕したのだろうか?今の時期には全く耕作機器は見られなかった。
仕事を終えたおじさんが、ロバにまたがり両足でポン、ポン、ポンとロバの歩調に合わせてリズムを取っている。その背中は「今日もよく働いたな」と言っているようだった。ちゃっかりロバのごはんの草も積んで満足そうに走っていた。
ガソリンスタンドがあればそこで夜を過ごそうと思っていたが、見つからない。もう少し行けばあるかな?いや、もう少し。もう少し。あとちょっと。この坂の向こうに。。。あるのかどうかもわからぬ、ガソリンスタンドに期待をするのに疲れてきたとき、身を隠すにはちょうどいいアカシアの森が両手に現れた。エチオピアの国境を越えてから時折、ふわっと香ってくるアカシアの香り。疲れた体にこれは嬉しいご褒美だ。
甘く優しい匂いに誘われて、入っていけそうな場所を探すが、昨日の雨で林床は水浸し。そんな様子を見ていると、時々見える水のない場所も、大丈夫かな、と思ってしまう。殆どあってないような傾斜を登っていくと、少しずつ水が消えていった。そして完全に水がなくなり林に入りやすそうな場所を見つけると、寝床確保開始。村に続く泥の緩い道を少し入って、そこから道なきアカシアの森へ入っていく。道はないが、雨が地面を均して平らで、下草も全く生えていないアカシアの純林だ。こんな場所に泊まれるなんてなんて幸せ者なんだ。この香り、この湿度、鳥のさえずり!最高。
アカシアの棘に時々シャツを引っ張られながらもいい場所を見つけた。道路からも少し離れ、静かな空間を見つけた。四方はアカシアの木々で囲まれ、トゲトゲの枝が新しい緑を纏って空の一部を覆っている。地面は柔らかく、大雨が降ったら沼になるような場所だったが、他の条件の良さに負けた。雨が降ったら移動しよう。
早速テントを張り、荷物をまとめて、全裸になった。全裸になるさ。こんな場所だもの。それに体を洗うんだもの。ただし、次いつ水が手に入るかわからないので使う水はボトル一本750ml。
旅を始めた当初はバケツ一杯の水でも少し足りないなぁ、と思うこともあったが、段々その量は減っていった。その過程で二度の革命があった。初めの革命は髪の毛を短くしたこと。そして最大の革命は石鹸を使わなくても気にしなくなったことだろう。体を洗う時の水のほとんどは石鹸を落とすために使われていたのだ。わが社は石鹸をあきらめることで750mlという省エネを達成しました、って広告を出したいくらいだ。まぁ「水浴びをしない」という選択肢が一番省エネではあるのだが、汗をかいたベトベトな体をすっきりさせたいというのは基本的人権で守られるべきであって、わが社もそこまで省エネを推奨するのはいかがなものかと考えています。アカシアの香りがいいからシャンプーなんていらんぜ。スッキリした。寒かったエチオピアはこの「水浴び」が不快で仕方がなかったが、暖かなスーダンでは楽しみになった。何より大自然の中、素っ裸で伸び伸びと水浴びできるのがいい。
陽が沈んだらアカシアの香りがどこかしっとりして、昼間の明るい感じはなくなった。さらに湿った土の香りが僅かに加わる。樹梢に滲む藍の空。
さて、暗くなる前に夕飯を済ませねば。こんな空間でゆるりと飯を食える幸せ。
そしておやすみ。
2時ごろに雨が降った。ここにいてはいけない、沼に沈んでしまう、と夢の中でもがきながらも結局睡魔にささやかれて、この程度では沼にはならないだろう、頼むからもう止んでくれ、と夢とうつつの間を降りしきる雨の音の中、眠りの深みに落ちていった。
そうして迎えた朝は清々しい青空を抱いたアカシアの明るい緑が輝いていた。
スーダンは2011年にハルツームを首都とするイスラム教の人々を主体にするスーダン共和国と、ジュバを首都とする伝統宗教並びにキリスト教を信仰する人々の国南スーダン共和国に分かれた。宗教だけではなく、気候も両者で全然違う。ウガンダに接する南スーダンは熱帯気候で雨期になると湿地のような大地になり、緑も豊富だ。一方北のスーダンはハルツーム以南を除いて、ほぼ砂漠気候である。植物もナイル川沿いに群がって生えるのみで、ナイルから離れたら最後、殆どの生き物は生きていかれない。
現在走っているのはハルツームよりも南の比較的緑豊かなところ。道の両側に広がる大地がトウモロコシやモロコシ(ソルガム)、ゴマや豆(スーダン料理の豆シチューに使われるソラマメ)の緑で果てなく覆われている。
ロバに乗った親子が道のわきを通り、緑のモロコシ畑に消えていった。鍬を肩に担いで、どこかで水を汲むための黄色いポリタンクを持っている。こんな広大な畑を機械を使わずに手で耕したのだろうか?今の時期には全く耕作機器は見られなかった。
ガソリンスタンドがあればそこで夜を過ごそうと思っていたが、見つからない。もう少し行けばあるかな?いや、もう少し。もう少し。あとちょっと。この坂の向こうに。。。あるのかどうかもわからぬ、ガソリンスタンドに期待をするのに疲れてきたとき、身を隠すにはちょうどいいアカシアの森が両手に現れた。エチオピアの国境を越えてから時折、ふわっと香ってくるアカシアの香り。疲れた体にこれは嬉しいご褒美だ。
甘く優しい匂いに誘われて、入っていけそうな場所を探すが、昨日の雨で林床は水浸し。そんな様子を見ていると、時々見える水のない場所も、大丈夫かな、と思ってしまう。殆どあってないような傾斜を登っていくと、少しずつ水が消えていった。そして完全に水がなくなり林に入りやすそうな場所を見つけると、寝床確保開始。村に続く泥の緩い道を少し入って、そこから道なきアカシアの森へ入っていく。道はないが、雨が地面を均して平らで、下草も全く生えていないアカシアの純林だ。こんな場所に泊まれるなんてなんて幸せ者なんだ。この香り、この湿度、鳥のさえずり!最高。
アカシアの棘に時々シャツを引っ張られながらもいい場所を見つけた。道路からも少し離れ、静かな空間を見つけた。四方はアカシアの木々で囲まれ、トゲトゲの枝が新しい緑を纏って空の一部を覆っている。地面は柔らかく、大雨が降ったら沼になるような場所だったが、他の条件の良さに負けた。雨が降ったら移動しよう。
早速テントを張り、荷物をまとめて、全裸になった。全裸になるさ。こんな場所だもの。それに体を洗うんだもの。ただし、次いつ水が手に入るかわからないので使う水はボトル一本750ml。
1本750mlなり |
陽が沈んだらアカシアの香りがどこかしっとりして、昼間の明るい感じはなくなった。さらに湿った土の香りが僅かに加わる。樹梢に滲む藍の空。
さて、暗くなる前に夕飯を済ませねば。こんな空間でゆるりと飯を食える幸せ。
そしておやすみ。
2時ごろに雨が降った。ここにいてはいけない、沼に沈んでしまう、と夢の中でもがきながらも結局睡魔にささやかれて、この程度では沼にはならないだろう、頼むからもう止んでくれ、と夢とうつつの間を降りしきる雨の音の中、眠りの深みに落ちていった。
そうして迎えた朝は清々しい青空を抱いたアカシアの明るい緑が輝いていた。