最後のインジェラ、トマトをベルベレで炒めて卵でとじたものと一緒に朝飯にした。今朝のおばちゃんの服は濃紺に絞り染めを施した清々しいワンピースだった。ふと夏の朝の涼しい時間に咲く朝顔を思い出した。
太陽が高度を徐々に上げ今日も蒸し暑くなりそうだ。たおやかな丘をいくつか越えると国境が見えてきた。今回の国境は少々面倒だ。スーダンでは外国人は滞在登録証を取らねばならない。いくつか大きな街で取ることができるようだが、申請費が二倍かかる。陸路で入る場合は国境で安く取れるという、珍しくオーバーランダーが得するシステムだ。
それから写真撮影の許可申請も必要と古いガイドブックには書いてあったので、これも確認する必要があった。そしてエチオピアブルからスーダンポンドへ換金。もうスーダンディナールは使われていないみたいね。
国境の町メテマMetemaに入って余った小銭でジュースを一本。店の前のベンチで飲んでいると、換金マンがどこからか臭いを嗅ぎつけてやってきた。レートを聞くと事前にネットで調べていたものよりも少し良いくらいだったので、交渉成立。なんだか少し得した気分。鼻歌交じりで国境に行くと、正規トラベルエージェンシーと自称する、「あ、命」と言って体文字を作るかの芸人(名前を忘れた)に体も勢いもよく似た男性現れ、「換金は?レートはいくら?それはやられたね。レートは普通40だよ」と私のレートの1.3倍のレートを言う。え、そんなにすぐに変動するのか、とよくよく聞いたらエチオピアはブラックマーケットがかなりあり、レートがブラックマーケットの方が遙かにいいということだった。確かにケニアとの国境でも、エチオピア側のレートが異様に良くて胡散臭いなぁ、と感じていた。
「命」さんが戻って払い戻してもらってきな、と言う。え、アフリカでそんなことが可能なのか!?と驚いていると「正規トラベルエージェントとして、ズルは許せない、換金した場所に行くぞ」とついてきてくれた。なんか胡散臭い親切。50、50なので距離を保つ。彼は町往くバジャジを乗り継いで私の自転車の後を追う。もちろん換金した場所に換金マンの姿は既になく。当たり前だ。それでも彼は探すぞ、と人脈を使って動く。彼の狙いが何なのか、少し興味が湧いてきた。直感的に悪い人ではなさそう。何てったって「命」を芸の糧にしているんだ。携帯電話で話していた「命」さんが「見つけたぞ」と言って、来た道を一緒に戻る。「自転車に一緒に乗った方が速い」とトライする。荷物を積んだ後ろに乗せてフラフラ進もうとすると「あ、ちょちょちょ、やっぱ無理!」と意外に臆病。やっぱり悪い人じゃなさそう。こういう臆病者に悪人はいない、はず。
「ちょっといいこと教えるから、まぁそこに座りな」とブナベットに入る。太陽が燦々と射す正午、ブナベットは木の影に隠れて涼しい。昨日の雨に濡れてか足元は少しぬかるんでいる所もあったが、それでも木漏れ日がチラチラ踊って気持ちが良い。
「ブラックマーケットでドルを替えても得だぞ」
答えが出た。彼はドルが欲しいようだ。そしてベンチに腰掛けた私の隣にはもう一人黄色い服の男が加わっていた。彼は言う。「ハルツームで替えると5.6だが俺だったら6.5でいいよ」
本当かい?と思う。いい話には裏がある。あるのだが彼らはブラックマーケット。ただドルが喉から手が出るほど欲しいだけ。恐らく両者のベネフィットが釣り合うから、安全だ。替えても大丈夫。交渉成立。「200ドルなら6.5、100ドルなら6.3」
まだこの先何があるか分からないので100ドルだけ換金することにした。
「命」さんと再び国境に戻ってきた。その間に「滞在登録は国境で取っておけ」とか「国境越えたら20kmと40㎞先に町がある」など有益な情報を教えてくれた。おそらく彼はもちろん自分の利益のことも考えて行動していたが、純粋にエージェントとして旅行者を助けたかったのだと思う。しかし長旅で警戒心に身を固め、擦れてしまった私は、イミグレまで案内してくれようとする彼を制して「後は自分でできるから」と言って、別れた。もちろん失礼の無いように最善を尽くしたが何というか、自分に40%くらい警戒心が残っていたのが嫌。かと言って警戒心がなければどこぞの獣に喰われるのもまた事実。バランス。イミグレを指差す彼に出来る限りの謝意を示して別れた。彼は「俺はシャワーを浴びに行ってくる」と言い残して。
「命」さんと再び国境に戻ってきた。その間に「滞在登録は国境で取っておけ」とか「国境越えたら20kmと40㎞先に町がある」など有益な情報を教えてくれた。おそらく彼はもちろん自分の利益のことも考えて行動していたが、純粋にエージェントとして旅行者を助けたかったのだと思う。しかし長旅で警戒心に身を固め、擦れてしまった私は、イミグレまで案内してくれようとする彼を制して「後は自分でできるから」と言って、別れた。もちろん失礼の無いように最善を尽くしたが何というか、自分に40%くらい警戒心が残っていたのが嫌。かと言って警戒心がなければどこぞの獣に喰われるのもまた事実。バランス。イミグレを指差す彼に出来る限りの謝意を示して別れた。彼は「俺はシャワーを浴びに行ってくる」と言い残して。
相変わらずイミグレわかりにくいよ。もう少し頑張れ、ランドボーダー。敷地の外ではノマドっぽい格好のおじさんたちが座談している。木陰に人が集うのは暑い場所に来た印。イミグレの建物の隣には待合室みたいなのが簡易的に設置されており、一人のおじさんがムンクの叫びの如く両手で頭を抱え眠っている。ムンクのそれと違うのは、オジサンが叫んでいるのではなく、それどころか幸せそうに、極めて安寧に眠っているのだ。午睡。他に人は無し。建物の中、昼休みのためか事務の女性が一人。忙しく何かを勘定している。室内は古いクーラーがかろうじて動いて冷やされていた。何も問題なく出国。
スーダン入国。イミグレ同じくわかりにくい。殺風景の部屋。アラビア文字を見てまた新たな異国へやってきたことを感じる。入国審査無事終了。滞在登録できるか聞くと少し渋り気味。面倒なのか、ハルツームでやりなさい、と促される。「ここでやってしまいたい」と粘ると別男性が「332Sポンドかかるよ」と顔を近づけて言う。「承知」と言って手続きに入る。無事終了。スーダンのビザ取りの時もだが、申請書に何故か母親の名前を書かせる欄がある。立て籠もり犯に母親使って交渉する作戦と心理的には同じやつだったりして。母の名のもとにおいて、嘘書いちゃダメよ、って。
スーダン側はエチオピア側よりもこじんまりした町で、100m程で町が終わった。人々の服装もよりイスラムらしく白いシンプルなものになった。
スーダンに入ったらすぐに砂漠を走るのかなぁ、と漠然と考えていたが緑の大地、どこまでも続いている。今夜は雨も少し降った。
小さなガソリンスタンド風の場所で今日はテント泊。店番のお兄ちゃんが「石がゴロゴロして痛いでしょう」とマットレスを貸してくれた。夜は涼しいがどことなく温かな気持ちで眠れそうだ。但し隣のエンジン音が非常にうるさいけどね。無私無心、南無妙法蓮華
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