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Africa!

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2014年2月15日土曜日

湖畔にてアフリカンの屁を聞く

お世話になった家族に見守られながら準備を終えて、小高い丘にある家を出た。もうみんなずっと見てるんだから、あまり変なことできないじゃないか。まぁ準備で変なことができる方がすごいか。

昨日の夜から降ったりやんだりの小雨が優しく木々の葉を叩き、空気が幾分ひんやりしている。湖周辺は標高が低く、太陽が出るとそれはもう暑い。頼むからお隠れになってという心持ちだ。

左に青黒い低い山が迫った湖との隙間にいくつもの農家が畑や田を耕し、トウモロコシ、キャッサバ、豆類、米を育てている。マラウィは水が豊富なためか、米も多く食している。そういえばJICAも専門家を派遣して丈夫なコメ作りを伝えているという話も聞いている。そういう支援もあってコメが多く食されているのだろう。

しかし日本の田んぼのようにきちっと区画分けされていなかったり、苗も列をなさずランダムだ。そういう風に植える品種なのだろうか。もしくは規則にとらわれない、いかにもアフリカらしい植え方なのだろうか。

今の時期は丁度植え付けのようだ。家族総出で田に出て、泥だらけになりながら作業している。私が通るのは殆ど見逃がさない。珍客をしっかり見届ける。私が手を振ると彼らも大腕を振って振り返してくれる。

トウモロコシは雄花がすでに咲き、緑の畑の表面にふさふさしている。緑に隠れてトウモロコシも着々とその身を膨らませていることだろう。

キャッサバは収穫時期などあるのだろうか。でもそこらでキャッサバ・スィマを作っている、臭いにおいがする。
マラウィあたりから主食にキャッサバが加わり、メイズ・スィマ(トウモロコシ粉を練ったもの)と共にキャッサバ・スィマも食されている。キャッサバ・スィマは水に数日浸けこんで柔らかくしてから干し、粉にする。水に浸ける過程で発酵している。そのためにキャッサバ・スィマは少し酸味があるし、干している時は穀物が発酵した臭いにおいを発するのだ。キャッサバ・スィマはメイズ・スィマよりも糊分が多く、少し透明がかっていてぷるんとしている。色もクリームがかった色ではなく、ピュア・ホワイトだ。

水に浸けて砕いて干して粉にするなんて、手間がかかるなぁ、と思いつつおばちゃんやおばあちゃんの作業を見ている。すると子供達が寄ってきて、ジュンブーラ、ジュンブーラと連呼する。もう自転車止めるとどこでも人だかりだ。後で知るのだが、ジュンブーラは写真を撮ってくれとのことだそうで、向こうから写真に納まろうと寄ってきてくれるのでマラウィは写真を撮りやすい。撮って撮ってと近寄ってきながらはにかんでいるのが可愛らしい。

マラウィは国土が小さいうえに、公共の交通機関に乏しいので、そこここに人が歩いていたり、自転車に乗っている。ここは自転車大国だ。人を運んで、薪を運び、豚、山羊を運び、野菜果物を運ぶ。積載制限なし。そんなマラウィだから、会う人会う人に挨拶して、一日200人以上と挨拶しているんじゃなかろうか。

そうだ、今朝はとても気持ちよくて、心の底からGood morning!
こっちが気持ちよく挨拶すると向こうもそれに答えてくれる。"他者は自分を映す鏡"とはなるほどこういうことか。
Good morning、How are you?、ムリブワンジ?、ディリブイノガイーノ。
マラウィは今まで通ってきた国の中でも一番英語が通じない国。田舎に行くと、ほとんど通じなかったりする。昨日テントを張らせてもらった家もそうだった。だから英語ができる子供をわざわざ電話で呼んでくれた。子供といえども英語が通じない者は多い。小学校から英語で授業がされているはずだが、先生ができなかったり、または学校に行けていない子供が多い。それでも誰かしら通じる人がいるのでいつだって助けてくれる。そんな風に甘やかされている私。全然チェワ語(マラウィの主要言語)を覚えようとしない。

湖の見える道を気持ちよく挨拶しながら走行していると、プシュンッという音が。あちゃー、またやってしまった。これで15回目くらいのパンクだ。しかしよく見ると、タイヤが穴開いているではないか!予想以上にジンバブエで買った、アフリカンが信奉するインド製のタイヤはもたなかった。1500km位。よく見ると繊維が見えている個所がいくつもあった。
修理しようと道脇に寄せて止まると、後ろを走っていたおじさんが大丈夫か?と声をかけて手伝ってくれた。昨日もキャンプ場でパンク修理していたら盥に水を張って持ってきて手伝ってくれた。この困っている人を放っておけない感じ、、、Warm Hert of Africaか。勿論知らない間に子供たちも集まり。。。始終こんな感じ。一人にしてくれない。

湖では漁師たちが小舟で漁をしている。国名の由来にもなった、湖面が炎のように煌めくといった感じではないが、湖面が鈍く白く控えめに輝き、そこに三艘の舟がうかんでいる。親子だろう。小さい人影も混じっている。マラウィ湖はもっと漁が盛んで湖沿いは漁村で賑わっているのを想像していたので、意外に閑散としていてビックリだ。魚も小魚が売られているのはよく目にするが、大きい魚はあまり見かけない。どこで売られているのだろう?

沿道で小麦粉の塊り揚げを買い食いしていたら不思議な奴に出会った。初め売り子から買おうと話しかけると、案の定英語が通じない。別に通じなくとも物くらい買えるのだが、英語を話せる人がすぐに助けてくれる。この時もきちっと洋服を着た、礼儀正しい優等生風の若者が通訳を買って出てくれた。そうやって買い物をしていたら、後ろから激しい勢いで挨拶をしてくる奴が来たではないか。すぐさま臨戦態勢に入り、身構えたが、彼にまったく攻撃性がなかったので安心した。洋服はいたる所が破け、肌の露出度が高く、ひどく汚れている。見るからに臭そうだ。こぶしを作ってぶつけ合う、若者アフリカン風の挨拶を私に強要し、一方的に名乗り満足して、それ一緒に食べていい?と私が食べていた小麦粉の塊りを指さしている。どうやって分けりゃいいんだ、こんな小さいの。と言って彼の差し出した手を牽制すると、潔くすぐさま諦め、ぼろぼろに破れた布きれのような洋服の隙間から袋詰めのピーナッツが出てきた。君はボロエモンか。そして一気に口に流し入れた。まったく何から何まで勢いのいい奴だ。その間、そこに居合わせたまともな人たちは、彼の一挙手一投足を見つめてバカにしたように笑っていた。優等生も彼は少しおかしいから、といって呆れていた。その後も勢いのいい屁をこいて彼らを笑わせ(アフリカンが屁をこいたのを初めて聞いた気がする)、もといた場所に戻っていった。そこでも彼はひょうきんにおどけて見せたりして、彼らを笑わせていた。彼はどことなく人々に小ばかにされていたが、実のところ道化師なのではないかと思った。小ばかにされるという身に甘んじながらも、人々に笑いをもたらす。なんという素晴らしい献身ではないか。彼は誇りを捨てて、人々を笑わせる道を選んだ。私にはできないと思った。彼の捨てた屁の音が今も耳に響く。

今日は三つも宿の値段を聞いて回ってしまった。まぁこういう日もあるさ。マラウィは今までの国と違い宿が安い。首都や観光地は別だが、ドミトリーが300円くらいで泊まれたりする。こっから北はそういう宿が存在する。おそらくトラックドライバーのためのものだろうが、貧乏旅人の御用達だ。
ジンバブエを除く今までの国の宿はその国の人のためのものではない。外国からやってくる観光客向け(および国内の限られた富裕層向け)なので値段が高い。オーナーも白人であることが多い。悲しいかな、国内に観光名所があってもその国の人は堪能できないのだ。この辺がアジアと違っていて、私には不健全な観光業に映る。

マラウィ以降はその国の人も多く利用している(とは言え中間層以上の人のみだが)ような宿が出てくるのだ。
首都でキャンプ場600円くらい、首都を離れると100円てのもあるくらいだから安い。できればキャンプ場に300円以上は出したくないという思いがあったので、初めの二つは$10だったのでパス。看板に値段書いておいてくれればいいのに、、、と思う。日本のビジネスホテルにはきちっと出ているし、秘密のオアシス、ラブホテルだって書いてあるぞ。でかでかと。マラウィ湖周辺は宿が湖畔にあることが多く、主要道路からそれて未舗装を2-3km急な坂を下る必要がある。つまり引き返しは登りだ。値段を聞いて引き返す気持ちを萎えさせているんじゃなかろうか、という急さだ。

やっと三番目の宿がキャンプMK1500(350円、個室MK7000)だったので、少し不満だがそこに決めた。せっかくだからできるだけ湖畔で泊まりたいじゃないか。
小雨が降ってはいたが明るく、白砂に優しくさざ波が寄せていた。遠くの方ではまだ漁に励む小舟が浮いている。白砂に立てられた茅葺の日除けの下でマラウィのビール、クチェクチェを飲む。ここは食べ物も飲み物も良心的な値段でいい。夕飯は小松菜のような葉野菜を擦り潰したピーナッツで和えた不思議なベジタリアンメニューとマラウィ米。マラウィ米が思った以上に旨くておかわりしたら、何故か先のごはんとおかずセットのMK700を越えるMK800も取られた。しばしばこのようなアジア人には理解できない現象が起こるのだが、それがアフリカなのだ。それでももしかしたら先のおかずとセットのライス料金を取られるはずが、ウェイターの勘違いで課金されていないだけかもしれない、下手に疑問をさしはさまない方が得だなと判断してMK1500を素直に払った。私もずるくなったものだ。いや大人になったのだ。




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