目覚めてテントから顔を出すと外は地面の匂いがした。空は雲で覆われ太陽は隠れている。
この辺りまで来るとなんだか空気にも湿り気を感じる。水は近いぞ。
この辺りまで来るとなんだか空気にも湿り気を感じる。水は近いぞ。
相変わらず車が刻んだボコボコの悪路を揺られ揺すられ私と自転車は進む。振動しすぎて尻回りが痛い。正確に言うと尻の谷間と前立の丘だ。そんなにイジメないでくれよ。
目の前に山が迫ってきてそれを登るとトルビTorbiの町だった。緑が多くて久しぶりに癒やされた。人も久々にこんなに大勢見た気がする。まずは乾いた喉に一杯ソーダをば。温いけど。くぁーっつ!このために走っているようなもんだ。
店の若い男が言う。「君は英語が通じるから良かったよ。一昨日辺りに来たヨーロッパ人自転車乗りは英語が通じなくて大変だったよ」まさかそんなはずはない。おそらくそのヨーロッパ人は先日道で出会ったオランダ人だ。私とは普通に英語で会話していた。それに旅しているヨーロッパ人で英語を話せない人を見たことがない(ナミビアの砂漠で私を囲んだ赤いほっぺのチェコ人くらいだ)。その瞬間ピンときた。むむ、彼もかの手を使ったな。何人かの旅人に聞いた話では、面倒臭くて誰とも話したくない時、英語を話せないふりをする、と。そうなのだ常に自分の時間を確保できていないと相当な疲れ出る。みんなお話好きだから。英語を話せなくなりたくなる気持ちはわかる。
特に下心のあるやつに関しては即刻話せなくなりたいね。
店の若い男が言う。「君は英語が通じるから良かったよ。一昨日辺りに来たヨーロッパ人自転車乗りは英語が通じなくて大変だったよ」まさかそんなはずはない。おそらくそのヨーロッパ人は先日道で出会ったオランダ人だ。私とは普通に英語で会話していた。それに旅しているヨーロッパ人で英語を話せない人を見たことがない(ナミビアの砂漠で私を囲んだ赤いほっぺのチェコ人くらいだ)。その瞬間ピンときた。むむ、彼もかの手を使ったな。何人かの旅人に聞いた話では、面倒臭くて誰とも話したくない時、英語を話せないふりをする、と。そうなのだ常に自分の時間を確保できていないと相当な疲れ出る。みんなお話好きだから。英語を話せなくなりたくなる気持ちはわかる。
特に下心のあるやつに関しては即刻話せなくなりたいね。
バスも休憩でトルビの町に停車していた。食堂あたりで急いでチャイを飲んでいる一人のアジア人を見つけた。黒いロングヘアで肌が異様に白い。旅をしている人であんなに白い人には出会ったことがない。ハロー!と声をかけた。がそっけ無く返されてしまった。久しぶりのムズング、それもアジア人に嬉しかったのに少し残念だった。シュン。
気を取り直していざソロロへ。今日は太陽がお隠れになっているので比較的涼しくていい。ソロロには2時頃着いた。まだ時間があったのでチャパティを二枚と水を持ってすぐに出た。道を作る工事業者のトラックが頻繁に通っている。明日は国境越えでできるだけ余裕を持ちたいので、できるだけ進んだ。ボコボコでお尻が泣いても鞭打った。って言ってもSMじゃぁないよ。
そうして見つけたテント場は最高の場所だった。数種のアカシアから成る林の中。動物たちが歩いたおかげで藪が拓かれていた。風が凪いで動くものは鳩くらいの大きさの嘴が大きい鳥だけ。サイチョウの仲間だろうか?羽はヤマセミを思わせる黒と白の縞で、喉のあたりに赤いアクセントが入る。くちばしも黄色と赤でハッとさせられる。地面に落ちている何かを嘴で摘んでは上を向いて喉に流し込んでいる。時々木の上に飛んでは滑空してまた地面に降りてくる。マヌケそうな鳴き声もその場所ののどかさを演出していた。
砂埃で体が汚れて気持ち悪かったので中国の道路工事事業者のキャンプで貰った大量の水の少しを鍋にとってそれで水浴びをした。砂漠の中で水を浴びられる幸せ。おお気持ちいい。静かな夕暮れ。呑気なサイチョウの鳴き声が響いている。
夕飯を食い終わって本を読んでいたら、遠くの方でコロコロというカウベルの音が聞こえてきた。人の声も風に乗ってやってくる。テントから半身を出して横寝の姿勢でいたら背中の方で何かの気配を感じて振り向いた。
黙駱駝 枯れ木に紛れて 覗きかな
あの長い首を目一杯伸ばしてジッと私を窺っている。あの愛らしい口の動きも止めて、ただジッと。変なんがおる!まずった、という彼の表情はラクダにしては上出来だ。ふん、お前も私から見たら相当に変な生き物だがな。コブあるし、なんでいつもそう笑顔なんだよ。眩しそうな目だし。やけに隊列作るのうまいしさ。
しばらく私を眺めてから彼は元来た道を戻っていった。しかしやたらと家畜や人の声の塊が近づいてくる。ふと気付いた。ここ、私がテントを張った場所は彼らの帰り道だ。だからこそ藪が無く広々としていたのだ。またラクダが来ては遠巻きに見て戻っていった。おぉ、そおか、そうか君たちはここを通りたかったのだね。いや、彼らに悪いことをした。それでも人のいいラクダは静かに藪の中を通って帰っていった。本当にいいやつだよ、全く。そしてラクダの主人にも見られてしまった。「やぁ」と普通を装ったが主人は訝しみながらも見逃してくれた。
そうして静かに夜は更けていった。
しばらく私を眺めてから彼は元来た道を戻っていった。しかしやたらと家畜や人の声の塊が近づいてくる。ふと気付いた。ここ、私がテントを張った場所は彼らの帰り道だ。だからこそ藪が無く広々としていたのだ。またラクダが来ては遠巻きに見て戻っていった。おぉ、そおか、そうか君たちはここを通りたかったのだね。いや、彼らに悪いことをした。それでも人のいいラクダは静かに藪の中を通って帰っていった。本当にいいやつだよ、全く。そしてラクダの主人にも見られてしまった。「やぁ」と普通を装ったが主人は訝しみながらも見逃してくれた。
そうして静かに夜は更けていった。
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