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2014年5月7日水曜日

気の緩み

働き始めて初めての休日。アリフとエンテーベの植物園に行った。店舗移動に伴う植物選定も兼ねて。
国立の植物園だがかつて植えられた木々が大きく成長しているという以外は特に見ごたえはなかったが公園だと思えば、とても穏やかな時間が過ごせてよかった。

植物園に養樹場があるというので、行ってみた。なんだ、鉄網の門に錠が掛かっている。「ようのある方はこちらへ」という電話番号に電話を掛けようとしていると後ろの方でアフリカでよく見かけるメイド仕様のワンピースを着た年配の女性が「あー待って、かけないで!ここにいるわー」と手に箒を持ってこちらに駆け寄ってくる。なんだか楽しい様子が全身から溢れているようなおばちゃんだ。「あぁよかった、今開けるからね」といって解錠してくれた。

中に入ると日避けなどの設備はボロボロだが、そんな中でもひっそりと植物たちは育てられていた。日本らしいものを探すことが目的だったので、楓がなかったのは残念だったがアジサイがあるのを見て少し興奮した。「こんな植物はない?」といって注文すると、ボロボロの黒い靴をひっかけたおばちゃんは植物が生い茂る中を楽しそうにブツブツ言いながら植物を探している。よく知っているなぁと思っておばちゃんの話を聞いていると、もう十五年ほど勤めているようだ。さすがにマニアの香りがするわけだ。
そして果樹の話になってレモンはあるかとか話していたら「ここにはないけどうちにはあるわ」ということで彼女の家に行くことになった。

また彼女の家が凄かった。こっちが本物の養樹場ではないかというほどにいろんな実生が育てられていた。自分で種から育てものがほとんどだが、その中にはアフリカではあまり見かけないようなものあったので聞いてみると植物園経由で色々手に入るのだという。彼女の庭を歩いているとザクロが!これには驚いた。マンゴスチンもあった。彼女は相当人生を楽しんでいるに違いない。アフリカでビジネスに熱心な人にはしばしば出会うが、植物や生き物に熱心な人にあまり出会っていなかったので新鮮だった。アリフは彼女から大量の苗木を購入していたが、彼女は全くもって金への欲がないように見えた。金よりも植物と一緒にいられることや、植物を買った人が満足する方が嬉しいようだった。例えば小さい芽生えを売るのは忍びないと言ってお金を取ろうとしなかったり、何というか、しっかり育ててから引き渡します、といった意気込みや植物への愛情が垣間見られた。

その植物を大量に車の後部に積んで次はアリフの友人宅へ向かった。積んできた植物のいくつかをお裾分けしてビールまで頂いてしまった。
コレガイケナカッタ!
運転して帰るアリフもちゃっかりビールを飲んでいたが、アフリカでは飲酒運転は日常茶飯事行われていたことだったので特に気にもしていなかった。しばらく歓談してからそこで働くメイドさんの友達も一緒にカンパラへの帰路についた。

一日動き回って疲れたせいか、アリフも私も口数が減っていた。後ろに乗っているメイドの友人も静かになっていた。しばらくすると私は眠気が襲ってきてコックリコックリ舟をこぎ始めた。後ろの女性もそうだったに違いない。助手席で寝るなんていけない、、、と思いながらも睡魔に勝てずに私は完全に落ちた。
激しい金属を擦る音とともに夢が揺れた。訳がわからないまま目を覚ますと車は反対車線を越えて右側の車一台入るほどの側溝に落ちていた。

アリフと目を合わせる。彼も充血した目できょとんとしている。何が起こったか初めわからなかった。すぐに後ろの女性が無事か確認すると、後ろの女性も眠っていたようで何だかわからない状態のようだった。

とにかく今車がある位置と本来走っているべき場所を考えると対向車線を走る車の間をうまい具合に突っ切って側溝に落ちたようだった。その反対車線には今も頻繁に車が通っている。眠気が一気に吹き飛んだ。少しタイミングがずれていたら大変なことになっていた。考えてゾッとした。

窓の外の道行く人々が野次馬で集まってきていた。交通警察もたまたま近くにいたせいかすぐに駆けつけていた。とにかく傾いた車から外へ出た。アリフは本当にすまない、と私に謝ってから警察と話しに行った。彼に全てを任せて暢気に隣で眠っていた私にも非があるので逆に私も申し訳なかった。とにかく誰も傷つけずに済んだことだけが救いだった。

野次馬の男たちが10人がかりで車を引き揚げようとしたが無理で、結局レッカー車を誰かが呼んだらしくやってきた。車の引き上げをしている間、アリフは交通警察と交渉していた。結局色々な交渉術で数千円払って解放となった。さすがアフリカである。しかもその警察をカンパラまで乗せて帰ることになったから妙な話である。

日本では飲酒運転は絶対にしないと言いきれる自信があるが、アフリカでは私は言い切る自信はなかった。みんながやっているから、法律が甘いから、と言う情けない論理であるが不思議にその論理の力が強かったことに改めて感じた。いや、飲酒運転はいけません。絶対に。反省します。

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