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2014年5月10日土曜日

風邪の誕生日プレゼント

一週間前から流行りの風邪を貰い、微熱が続いていた。そして今日は三十の誕生日だというのに高熱が出て仕事を早めに上がらせてもらい寝込んでしまった。またしても39度を越える熱だ。アリフもチャールズも数日前に熱が出て病院に掛かっていた。私も微熱が出てはいたが、マラリアの疑いはなかったのでしばらくすれば治るだろうと思って行かずにいた。

しかし高熱が出るとやはり不安になる。ましてや微熱が続いて体力が消耗していたのでマラリア発症の可能性は高くなる。今日行くべきかな、、、?とベッドで悶えていると仕事を終えたアーロンが「病院に行くか?」と部屋を覗きに来てくれた。それで決心がついた。いちいち悩んでないで血見てもらって白黒つけてもらおう。
そうしてひどい頭痛があったが少し食べて解熱剤飲んで待っていると、店じまいを終えてやってきたアリフとチャールズも付いてくるような雰囲気になった。
結局三十路になる男が三銃士に付き添われて血液検査をしに病院へ行くことになった。その光景はまことに珍妙なものだったろう。病院に行くのにどこか楽し気でジョークを飛ばしあっている。傍から見たら夜中にえっちなピクニックにでも出かけるかのようだ。


病院に着くと受付があり、そこで先に支払いを済ませるはずなのだが(アフリカはお金がないと診療してくれない、シビアだ)、係りの者がおらず先に問診を受けることに。静かで清潔感のある深夜の病院の廊下を四人の男が看護師に案内されて行く。病室に入ると若い男の看護師がテレビに夢中だったようで、面倒くさそうに先生のいる方を指さす。問診は髭の剃り跡が青いアラビア系の先生だった。何となく女性っぽい仕草で丁寧に聴診器で診察してくれたので、なかなか好感が持てた。同性愛が禁止されている国だが、頭が熱でおかしくなっていたためか「あーここで彼がカミングアウトしてきたら俺はなんと答えればいいんだろうなぁ」なんて考えていた。次へ案内してくれるはずの看護師はやはりテレビに夢中だった。そして日本の病院のような採血室で血を採って、再び廊下で待つことに。結果は思いのほか速くでた。
結果は陰性。
しかしまたしても細菌感染しており、それで高熱が出ていたようだ。事務室の清掃で汚い空気を吸い過ぎたか???

そして抗生物質と咳止め、解熱鎮痛剤が出されるとのことで受付の方に戻る。解熱剤が本格的に効き始めていたのと、検査によってマラアリアでないという安心を得たことで、寒々していた廊下も今はただの清潔な廊下だった。四人のおっさんがひたひたと廊下をゆく。突然アリフがハッピーバースデーを歌い始め、それにアーロンとチャールズが加わる。ちょ、ちょ、ここは病院だよー。何だか心配で疲弊していた心がとろんと温かみを増してきたが、私の冷静な部分が廊下を行き交う看護師や事務員を観察していた。ところが、看護師らも別に咎めるような顔をしていなかったので、私も純粋に心を開いて、彼らのハッピーバースデーを中心にじっくりと染み込むままに任せた。そしてケーキをプレゼントしてあげよう、とアリフが言うので「あぁ、でも抗生物質を埋め込むのを忘れずにね」なんていう冗談を私も飛ばせるほど気分が楽になっていた。

30という節目を妙な形で迎えたが、今までの人生で培ってきたことを最大限に生かして、良く生きていこうと思った。そんな一日。

そんなあっけらかんとした仲間たちです。

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