日本での最後の日は曇りで肌寒い日だった。
蒸し暑かった夏が終わり、空気全体が秋めいていた。
準備は終わっているはずなのだが、なんとなくまだ何かあるんじゃないかという気がしてならない。
ウサギとカメに別れを告げる。カメは万年だからあと9975年くらい生きるが、ウサギの方はそんなに長くないだろう。
ゆっくりと頭を撫でる。いつものようにどこかくすぐったそうな、気まずそうな顔でじっとしている。
祖母にもしばしの別れを告げる。出発前に一番心配していたのは祖母なのだ。
早く出発して、その心配の種を消してあげないといけない。
時には威し、また時には遠まわしにやめさせようと諭すこともあったが、最も私のやることをよく理解し、さまざまなサポートをしてくれたのは父と母である。
仕事もしないで遊び歩いている愚息を持ってしまった彼らに、真に深く同情する。
そうでもしないと、私は罪悪感で発狂してしまうかもしれない。
日本の秋を惜しむべく、鈍く光る紫の巨峰を口に入れて出発。
この味を来年味わうと巨峰に誓って成田へ。
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