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2014年8月3日日曜日

0803 権力の怖さ

ナイロビで逮捕され、留置所に連行された。親父にも逮捕されたことないのに。
罪状は自転車の危険運転だそうな。歩道橋のある場所では自転車は道路を横断してはいけないのだそうだ。だってスロープでもなければ急な階段だぜー。あれは完全に登る気を削ぐ階段だ。歩きならまだしも自転車担いで登る奴はいない。しかもそんな小さなことで捕まえていたら大変なことになるぞ、アフリカでは。もっと危険なことがあるだろ、たくさん。
捕まえられて待機しているそばでもスピード違反、ノーヘルバイクがじゃんじゃん道をゆく。とはいえ数人の警察が違法だというのだから逆らっても仕方がない。口答えせず従いましたとも。そしたら自転車ごとピックアップに載せられた。既に飲酒運転で捕まえられていた若い男が乗っており別の警官に交渉を試みている。さらに隣にお酒で寄って道でくだを巻いていたみすぼらしいおじいさんが乗ってきた。酒臭い。が気が弱そうで、スワヒリで勘弁して頂戴節でも唄っているようだ。さらに助手席に必死に抵抗する呑兵衛が警官に怒鳴られながら押しこまれている。これで総勢三人の飲酒オジサンと共に警察署に行くことに。
警察署に着くと私を捕らえたいやらしい警察官が「留置所に16人ともどもぶち込んでやるからな」と名簿を見せながら脅してくる。完全に賄賂要求の姿勢だ。脅せば脅しただけ高額をもらえると思っているに違いない。クソヤロウノウンチヤロウメ。
アフリカの留置所はあまりよろしくないのは聞いている。南アでは出所するとHIV感染しているとか。なんとかしなくてはいけない。先日知り合った大使館の方に電話をかけるも繋がらない。南アで買った私の安い携帯は時々不機嫌になるようだ。そしてケニアにいる大学時代の先輩にも繋がらない。結構困った。久しぶりに真剣に少し先の未来のことを考えた。そして深呼吸して少し覚悟した。覚悟が決まればいやらしい警察官と真剣勝負。
奴は少しでも多くこの貧乏旅行者から金をふんだくりたい。私は留置所に入りたくない。かと言ってヤツの要求を丸々飲むのは私の薄っぺらな正義が許さない。私は権力を着てでかい顔をする奴は嫌いだ。1Kshでも少なくしてやりたい。できれば肥溜めに突き落としたくもある。
交渉するときに必ず守るべきこと。相手を怒らせてはいけない。そして自分も怒ってはいけない。ウガンダの友人アリフから教わったこと。そして相手の妥協点を正確に把握し、そこにゆっくり近付く。カードとして相手の慈悲に訴える素振りも見せるが、そもそもこういういやらしい奴は慈悲なんて持ち合わせていないから、完全に慈悲にすがっては相手の思うつぼだ。このカードは相手の要求を探る時間稼ぎくらいにしか使えない。何事もバランスが大事なんだと思う。そして誠実ではない相手に誠実さでぶつかってはいけない。キリストに言わせればそれでも誠実さを示しなさいと言うだろうが、私はまだ人間ができていない。左頬を張られたら右頬を出すよりも右手が出る。
彼の要求はKsh20,000の罰金を払って出るか、それとも俺と取引するか、Ksh5,000だ、と言う。そもそもこのような軽犯罪にKsh20,000の罰金を課すことが可能なのか、日本の法律ですら定かではない私は判然としない。とにかく小さかろうが大きかろうが私はケニアの交通法に抵触するような行為を行ったらしいことは確かだ。正直に罪を認めて法の裁きを受ければ、彼の言うようにKsh20,000払わなければならないかもしれないし、単に今回は「注意」で済まされるかもしれない。ケニアの警察に「注意」なる措置があるのかもわからない。そこに行く前に目の前の男と交渉すれば、確実にお金は払うものの小額で済ませられるかもしれない。頭の中の天秤が揺れ動く。そんなことを考えながら目の前の男を観察していると、彼の目が一瞬別の方を気にしたのを捉えた。彼の弱みを掴んだ瞬間だった。彼は交渉を急いでいる!下げられると思った。そしてKsh1,000しか渡せないと伝えた。彼は拒否、少しイラッとしたように見えた。おっといかん、下げすぎた。Ksh3,000でどうだ?彼は確実に辺りを気にしている。行けると思った。彼は少し間をおいて、「よし、いいだろう、こっちへ来い」と言った。
そして彼に導かれる方へ行くとにこやかに優しそうな微笑みを見せるオジサンが二人。警察署の裏手は寮にでもなっているのだろう、洗濯物が干してあったり、七輪様のものが放置されていた。さしずめこの二人のオジサンは非番の警官か何かだろう。そしていやらしい男は金を払えばこのフェンスを越えさせてやると言った。目の前には人の背丈程の脆そうなフェンスが波打ちうねりながら立っていた。Ksh3,000を払って本当に逃がしてくれるのか不安は残ったが、その辺は信用するしかないと判断し金を渡すと、いとも簡単に逃がしてくれた。しかも二人の優しそうなオジサンが自転車を内から外の私に渡してくれた。そして「今度はちゃんと歩道橋を渡るんだぞー」と手を振って見送ってくれた。彼らに対しては不思議な気持ちで「ありがとう」と挨拶し、いやらしい男には一瞥をくれ、何かの時のために奴の84707という胸のナンバープレートを記憶し去った。
よく考えたら連絡を誰にも取れないってのは怖いことだ。というわけで人生初のスマートフォンを買った。意外とコイツやりおるね。せっかくパソコンが使えなくなってデジタル機器から開放され、本当は日本に帰る前の少しの時間、手帳だけでアナログな生活をしようと思っていたが、残念運命がそうはさせなかった。そんなわけで写真はちゃんとしたカメラで撮ったものを載せることは出来ないけど、活字で頑張るのでブログとたまにの報告よろしくお願いします。

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