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2014年5月13日火曜日

ルパン

フィリピンでもルパンは人気のアニメのようでチャールズがルピーン(英語発音はルピンなのだそうだ)と言ってレストランのスタッフを罵っていた。というのも私が店に働き出して三日目に大規模な横領が発覚したのだ。店の帳簿管理がおざなりなため正確な数字はわからないが、毎日ではないが取られた日は一日当たり4万円ほど、多いときは12万円程掠めとられていたようだ。そんなに大量のお金が盗まれていたのに気付かないのは管理する側の問題ももちろんあるが、常に疑ってかからなければいけない社会というのは寂しすぎる。今までもサーモン一尾、ワインをケースごと盗まれたことがあったようで、それが原因で経営者側はアフリカ人スタッフを全く信用していないうえ、やはりどこか距離を感じる。

盗みの主犯格と見られるレジ係の二人は翌日即刻クビ。そして証拠はないがかなりのアフリカ人スタッフも関わっていると経営者側は疑っている。しかし警察沙汰にする気はないようだ。警察に届けてもお金は返ってこないから、と言うのが理由だそうだがもっと事情が複雑なように見える。

さてどうやって見つかったか。その日はとても忙しい日でかなりの売上があったと思われる。しかし店を閉める時にオーナー自らがコンピュータに記録された売上を計算すると思ったよりもかなり少なかった。そこで何かがおかしいということに気が付いたようだ。それでパソコンの売上登録を調べていくうちに事態が発覚したというわけ。レジ打ちの一人は罪を告白したようだが、もう一人はかなり動揺しながらも白状しなかった。しかし彼が最近トヨタのランドクルーザーを購入しそれで通勤していたことが目撃されており、そして服装も携帯も彼の給料ではとても買えないような代物を持っていた。それを問い詰められた彼は姉に買ってもらったという。
そしてもう一つ、スタッフには毎日昼と夜に賄い料理が出されるのだが、それが近頃手を付けられずに廃棄されているのが見られた。飯は他で食えるからいらないとでも言うかのように。事態が収拾した後は廃棄はそこまで多くなかったので、やはり他のスタッフもなんらかの形で甘い汁を吸っていたのだろう。

何が問題なのか。これだというのは難しいが、見ていて感じるのはスタッフと経営者の両者が表面でしか結びついていない、信用し合っていないことがあげられる。しかもそれはどこで始まったかわからない悪循環によって生み出されていると思うのだ。アフリカでは極めて普通だが時間外でも働かせられる。安定したシステムがないので弱いものが一番追いつめられる。などスタッフが持つ不満は大きい。そして何かあると代わりがいくらでもいるのですぐにクビにされるという怯えがあり、嘘を付いて保身に走る。だから経営者側も期待している成果を得られず益々苛立ち、更に嘘ばかりで本当の情報が入って来ることがなく、うまく行かない。オーナーのアリフは経営が落ち着いたら、スタッフの給料をもっとあげて医療保険もつけてやりたい、というビジョンを持っているがそれがなかなか形にならず、またスタッフとの対話が少ないために伝わっておらず未だに難しいのが現状だ。

ウガンダにおけるレストランのスタッフの支払われる額としてはそれほど安いものではないが、やはり一日12時間働いてそれほどではあまりモチベーションもわかないのではないか、と思う。オーナーは経営が圧迫されているので自分はあまり給料は取っていないというが、それでもアフリカンスタッフとは比べものにならない程いい生活ができる。誤解のないように断っておくが、ウガンダにおいてはアリフはかなりスタッフを優遇している方である。ただ、客四人くらいが一食食べると彼らの一カ月分の給料ほどの値段。ウェイターはそれらたったの一食に惜しげもなく払われるお金をどういう思いで受け取っているのだろう。利益が出ても横領されて帳消し、低賃金が繰り返され、さらにスタッフの鬱憤が溜まりまた別の横領、、、悪循環を断ち切るのは難しい。

横領や不正はアフリカでは頻繁に起こっており、この図式は一レストランに限らず、国レベルにも当てはまる。


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