陽が落ちてしまいカンパラまでは行けず、今日は手前のナマゴマという町ので泊まることにした。道路沿いの人間の数の量から首都が近いことが窺い知れる。日は沈んではいるが、眩しい車のライトを始め、店の薄暗い蛍光灯や白熱灯の細々とした光が路上、沿線に行き交う。人の多い場所で暗くなると体が無意識のうちに防衛反応を示し始める。私はメガネを付けても暗くなると目が利かないので、何かあったら対処しきれない。だから暗い中での行動は控えてきた。今日も暗くなっていたので、とにかく泊まる場所を確保しようと、自転車を引きながら、道行く人に片っ端から声を掛けていく。
「宿はないか?」
「あっちにあるよ」
その指示された場所に行くが見当たらない。どこだろうか?別の人に尋ねる。
「この辺にホテルがあると聞いたのですが」
「あの明るい場所に行ってごらん」
明るい場所はただの店だった。そういうことをあと二回くらい繰り返してから、ある人に、
「ここにはホテルはないよ。カンパラまで行っちゃえばいいよ。そこなら必ずある」
と言われた。ここには本当にホテルはないのかもしれない。東アフリカはどんな小さな街でも宿に困ったことはなかったので油断した。都市に近いのだからないわけはないだろう、と考えていたが、逆の発想をすれば、カンパラまで行けばいいので宿を作る必要はない、とも考えられる。
かといってカンパラまではまだ10km以上あるうえ、今回は働き口も見つけなければならず、安くまた働ける場所にアプローチしやすい場所に宿を決める必要があったので、今日は無難にこの町に泊まりたかった。最近ずっと宿泊まりだったが、この際懐かしきテント泊でもしようという気になった。
薄暮の中、かろうじて目に入ったのはガードマンのいる家具工場だった。入り口からは敷地のすばらしくふかふかな芝生が覗いている。あぁ寝転がったら気持ちよさそうだなぁ、、、警備員に怪しいものではないことと、一晩泊まりたいことを伝えると、
「たぶん無理だと思うよ」
と正論を口にしながらも、責任者のところへ聞きに行ってくれた。若い責任者は渋っていたいたが、そこへ中年の地位不明のおじさんが現れ、「自転車なんだからこれから宿を見つけるのは大変だろう、いいじゃないか泊めてやれよ」という有難きアドバイスで泊まれることになった。これだからおじさんは好きさ。何というか、不審者に対する懐の深さを持っている。
しかし水がない。工場の水道もストップしており、困っていると警備員が近くで売っているよ、と教えてくれた。興味深そうに私のテント設営を見乍ら、
「自分で買いに行く?」
と聞いてきた。
「ん?他に方法があるのか?」
と訝しく思っていると、格下と思しき警備員を呼んで買いに走らせてくれた。仕事の邪魔はできないと申し上げる暇すらなく、若い警備員は会に出ていった。そんな親切な警備員に見守られて星空の下、久しぶりの自炊でラーメンを食べた。遠くには町の明かりがポツポツと灯っている。カンパラはすぐそこだ。
やっぱりテントはいいなぁ。テントの何がすごいって、どんな場所であっても一人分のしっくりくる空間を瞬時に作り上げて見せるところだ。私には宿よりもこっちの方が身の丈にあっているんだろうなー。
それにしてもカンパラで仕事見つけられるだろうか?見つけられなかったら、この生活も切り上げなければならない。明日が勝負だ。
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