ページ

2014年3月26日水曜日

エジソン君

八日間の療養を終えてようやく次なる国ルワンダに向けて出発。化膿していた足の傷も今は傷の治癒により痒みがあるものの、痛みはほぼ消え調子はいい。ところがどっこい朝から雨がぱらついている。今回の病の一因に氷雨というのもあったので、出るのを躊躇って宿の手伝い人のエジソン君と話していた。やはり私がブルンジに来て観光していることが不思議らしかった。そんな話からブルンジの政治の話、どうしてアフリカは今でも貧しいのか、などを話していた。エジソン君は大学を出ているので英語を話せるうえ(仏語とキルンジが公用語のブルンジで英語を話せる人はスワヒリも合わせて4言語くらい話せるのが普通)、なかなか政治に対しても熱い思いがあって話していて面白かった。

今までのアフリカの国にも言えることだが、アフリカ全体を取り巻く政治問題の文化的な足かせとして、ネポティズムという問題がある。ネポティズムというのはポジションにあったり力のある者が家族・親族をひいきして、それらに有利になるような政策を執ったり、ポジションの斡旋を行う事を言う。もともとアフリカは酋長を中心に興った小国を基本にした文化的背景を持つので、そういう家族・親族贔屓という習慣が昔からあった。それが植民地時代に西洋諸国によって適当に線引き出鱈目に区分けされ、そこに西洋諸国が誇る民主主義が接ぎ木された。
そう言う背景があるので現在でも厳密に民主主義と呼べる国はアフリカ大陸では極めてま稀だ。どこの国でも家族や親類のコネクションがないといい仕事に付くのは難しいし(特に公務員)、学校へもコネクションがあるとさほど優秀でなくてもすんなりといい学校へ行けるという話をよく聞く。私は厳密に調べたわけではないので真実はわからないが、多くの一般人がそう言う不満を抱えているというのは間違いではなかろう。そして何よりも政治家の汚職が頻発していること。これはBBCなどの海外のニュースでも取り上げられていることなのでかなり一般的な話だ。南アでは「すっぱ抜かれたズマExposed Zuma(確かこんな名前だった:ズマは南アの現大統領)」なんていう本も出版されている。そこにはズマが年間に家族に使ったお金が恥ずかしい程に詳細に計算されて暴かれていたり、ズマの親族がどれだけの公営の会社や組織の役員に座っているかなどが書かれている。著者がどれだけの証拠に基づいて書いたかはわからないが、まぁスゲー家族びいきだなといった感想を持つには十分な内容だった。

ブルンジの貧しい家庭に生まれたエジソン君も例にもれず大学を出たところで(ブルンジでは大学進学率は日本ほど高くない)コネクションがないといい会社に就職できない、政権を握る党員が親族にいないと公務員にもなれないと嘆いていた。無責任で無知な私は「じゃあ君たちで政治を変えるべく運動してみればいいじゃないか」なんて言っている。そんなことを言いながら私自身政治を変えるべく運動したこともないし、それに命をかける覚悟すら微塵も持ち合わせていないから滑稽でたまらない。ブルンジではまだ政権批判はご法度のようで、政権批判すると物理的に消されると言う。
ふと思う。日本もさまざまな民主化の過程があり、そのうちに命を落とした人がたくさんいる。いや民主主義のためだけではない。社会主義的、共産主義的な香りを民主主義に取り入れるべく(結果的にそういう形になった)戦って命を落とした人も多い。現在生きる我々は先に生きた人々の苦労を当たり前のように享受し、消費している。現在日本が様々な問題を抱えながらも世界の中で見れば比較的穏やかな国であるのは先に生きた人々のおかげである。アフリカを見ているとそういうことを切実に感じることができる。

私はアフリカを渡り歩いて来てずっとアフリカの人に対して感じていたことがあったので、この際エジソン君に聞いてみた。
「どうしてアフリカの人は優れたものがそばにあるのにそこから学ぼうとしないのか?」
アフリカでよく耳にするのは「俺はビジネスをやりたいんだ、でもお金がない」という話。みんながみんなビジネスをやりたいと言っている。ではビジネスを始めたいというからには何かビジネスの勉強をしたのか?というとそんなものは全くしていない。そんなんだからビジネスといってもつまらない個性を感じられない店で、ほとんどもうけを出せないようなものを売っているしかないのだ。そして外国からやってきた商人にどんどん負けていく。一方で中国やインドなど外国からやってきて店を持っている人々。殆ど失敗の話は聞かない。もちろん後ろ盾や元本が違うという反論もあろうかと思うが、何よりも彼らにはビジネスのノウハウがある。それは家族や友人から代々伝えられるもので自然についていっているものだ。
私が疑問なのはどうして成功している彼らから何かを学び取ろうとしないのか?ということだ。中国ショップで働いているアフリカ人は結局使われておしまい。そこで学んでノウハウを手にして自分の店を持ったという話はついぞ聞かない。だから南アにいたときの近所のモールの店舗はあっという間に中国人経営者のミニショップに取って代わられた。
私はビジネスを学んだことがないので何が王道なのかは知る由もないが、何でも先人がいればそこから学ぼうとする姿勢を持つことは極めて大事なことであると思う。よく日本の職人技術の継承システムは優れているという話を耳にするが、そういう点から見るとアフリカの技術継承はレベルが低い。兎に角何かを人に教えるのが下手。教えてと頼むと、やってあげてしまうのだ。だから何時までたっても自分でできない。それに加えて組織的な未成熟さもあって、効率的な技術継承がしにくい環境だ。
そんなことをエジソン君と話していた。彼はいろいろ反論も交えながら聞いていたが、大事なのは外からの客観的な視点を知ることだと思う。これはもちろん私自身に投げる言葉でもある。自分の国がどう見られているか。何が問題で、何がいい点なのか。特にブルンジは観光客や外国のビジネスマンが少ないので内に籠りがちなところがある。更に英語圏でもないので日本と同じような問題を抱えている。つまりグローバルな議論に参加しにくいということ。
そういう意味でたまに来た変なアジア人の意見として心に留めおいてくれればと思う。私自身旅で出会う人々から日本を教えてもらっている。私の出会ったアフリカ人はほとんどの場合、日本=チャイナ=ジャッキー・チェン=格闘好き、くらいしか知らないので彼らから日本を再発見することは極めて難しいが、アフリカを旅している外国の人からたくさんの客観的な目を頂戴している。今後もそれは旅の一つの楽しみであろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿