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2013年11月30日土曜日

村の水汲み

ナミビアの北東部は不思議な形をしている。
まるでビクトリアの滝が欲しくて手を伸ばしているようだ。
それでも結局ビクトリアの滝までは届かず、その手前でザンビア、ジンバブエ、ボツワナと接している。
この地域はアンゴラとの戦争時に地雷が使われ、現在も埋まっている場所があるという。

グルートフォンテイン(Grootfontein)から北上しルンドゥ(Rundu)に入り、そこからアンゴラとボツワナにはさまれたこの細い回廊を東進する。
ツメブ(Tsumeb)から雲が多くなり始め、グルートフォンテイン以降ずっと曇りで、とうとうルンドゥの手前で雨にやられた。
この辺りから緑も多くなり、雨が比較的多い地域になっていく。


ようやく乾燥とはおさらばなわけだ。
ちょうどこれから雨季になるということもある。
今までが乾燥しすぎていたので、湿った空気が嬉しい。
唇は荒れないし、指先も潤っている。

グルートフォンテインからルンドゥまでは町はなく、小さな村がいくつか点々とあるだけだ。
村があるので水は手に入る。
それだけでも気持ち的にすごく楽だ。
だいたい17時くらいに疲れが出てくるので、行動を切り上げる。
丁度その時間になると村から灯油タンクやバケツのようなものを頭にのせた女性や子供が出てくる。


水を汲みに行くのだ。
共用の蛇口は村にいくつもあるわけではないので、こうして水汲みを毎日行うのである。
泊めてもらった村人の家は歩いて蛇口から10分程の距離にあった。


私が村で「テントを張ってもいいか」と交渉していると、どこからともなく容れ物を頭に乗せて、静かに会話しながらみな同じ方向へ収束していく。
なんだか面白そうだ、テントを張ってから家の人に付いていった。
共同の水汲み場にはたくさんの女性と子供たちがいた。



私も行動中の水ボトルが空だったので少し貰った。
この辺りから少し水道水(井戸からポンプで汲み上げている)が塩類を含むようになる。
まだここのはさほど強くはなかった。
暫くしてタンクに溜まった水がなくなり、今日の配水は終わった。
管理している若い男に対して、一人だけブツブツと文句を垂れていたが、他は概して「しょうがないかぁ」と諦めて空のポリタンクを手に頭に帰っていった。
空のタンクを持った6、7歳の子供たちが楽しそうに帰っていく夕暮れであった。
水を手に入れた人々も満足そうにゆっくりと歩いて帰っていった。


私も自転車で来ていたので一つ大きいのを運ぼうとしたが大変重い。
片手で持ち、それをサドルからハンドルに伸びるバーに乗せて走るのだが難しい。


村に戻って夕飯の支度をしていると、10mほど離れた柵の向こうから子供達が顏をを覗かせている。

その後村の男の子が私に興味をもって、やってきた。
辺りはだいぶ暗くなっており、私には彼の顔がはっきりと見えなかった。
日本人は中国人にそっくりだね、と彼に私は見えていたようだ。
その後、日本やナミビアの話、彼がなりたいパイロットの話をした。
いつか彼も私のように自転車で旅をしたいと言っていた。
10年後くらいにはいろんなアフリカ人が自分の住む大陸を自由に行き来できるようになっているのだろうか。
雲を避けるように惑星が西の空に輝いていた。

朝目覚めて朝飯を取っていると、体から出たいものの声が尻の方から聞こえてきた。
家主のおあばちゃんにトイレ貸して!と聞くと、
道を挟んだ林の方を指さしている。
そうか、なんとも大きなトイレじゃないか!
道行く車を茂みの中から見送りながらする朝の一仕事は気持ちよい。

朝飯を食いながら準備していると子供達が興味津々で覗き込んできた。
何してるの!?


これまでの村で必ず何かをねだられてきたので、この子らにも何かねだられるのではないかとハラハラしていたが、
何も求めてこず気持ちよく私を見送ってくれた。

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