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2013年10月15日火曜日

番犬の後ろでおやすみなさい

Nuwerus → Bitterfontein → Cross Provincial boarder → Garies → Brakdam Farm(山羊と牧場で泊まる)



お世話になったコーバスさんとお別れ。
移動の旅は本当に出会っては別れの一期一会だ。

夜は寒くて寝つきが悪かった。
内陸に入ったので日夜の寒暖差が大きくなってきている。
この辺りは背の高い気がほとんどなくなるので、休むにしても日陰を探すのに苦労する。
N7沿いには四阿のあるちょっとした休憩所が30km~50kmおきくらいにあり、休憩時にとても助かった。


国道N7に乗ってからは上りと下りばかりの坂道だ。
旅をしていると図らずもさまざまな人に助けてもらったり、元気をもらったりする。
ただ私はそれに対する慣れが怖い。
坂道同様、平たんな道や、下り坂に慣れてしまうと、上り道をつらく感じてくる。
でも上り道が続いた後の下りは最高に気持ちがいい。
ものすごいスピードで車に抜かれたって、独りでひゃっほ~いしている。

人に対する感謝の気持ちも同じに思う。
優しくされ続けると感覚がマヒし、少し不親切にされると、「ちぇっ」と思ったりする。
そして優しくされてもそれに対しての感謝の気持ちが鈍くなる。
だから親切、不親切両方合わせて旅の面白さであって、どちらが欠けても生温いものになってしまう。
難しいかもしれないが、どんなことにもありがたさを感じられる敏感さは常に持っていたい。


BitterfonteinもGariesもN7沿いから少し中に入ったところにあり、先を急ぐため通り過ぎた。
Gariesの入り口でショベルカーを操作していたおじさんと話したら、出稼ぎで家族をCapeTownに置いてこっちに来ているという。
来週末は会えるのだと言って嬉しそうに話してくれた。
N7に入ってからは長い距離、工事区間が続いていた。
そういう風に働いている人がたくさんいるのだろう。

Gariesを過ぎると川がありそれに沿って大きな木が生い茂って細長い森になっていた。










周りはこんなんであるにもかかわらず。

生き物にとって水がどれだけ恋しいものか思い知らされる。

あ、そうそうBokkom君はまだ一緒。
後ろにぶら下がっている。

風よりも遅いと後ろから君の匂いがね。。。
またすごいんだ。

その川から登りが始まる。
それが結構長く、Karkamsに今日中に着けないだろうなという不安が出てきた。
日の色が濃くなりはじめ、山々の影が長く伸びてくる。
一つ登り切ってもちょっと下ってまた上り坂。
完全にKarkamsはあきらめた。
こうなるともう目は完全に野営ポイント詮索モードだ。


しばらく探しながら漕いでいると、羊飼いならぬ山羊飼いが、
山の端に消え去ろうとしている光の中で山羊を追っているのを見かけた。

その光景が美しく、野営ポイントを探すのもやめて写真を撮り始めてしまった。

おっ、牧場ということは水もあるはず。おっ、水のタンクが見える!
ここに泊めてもらおう。ということで、300m位離れた先ほどの山羊飼いのおじさんに
「水が欲しいのだけど、入っていーい!?」
と大声で聞いた。
入れ、という合図があったので入れてもらうと、本当にのどかな牧場。
ほのかに香る山羊の糞の香りがまたいい。
走ってくる番犬に吠えられるが山羊飼いに一度注意された犬は、二度と私には吠えなかった。
「もしよければここにテントを張りたいのですが、いいですか?」と聞くと、
英語はあまりわからないようで、
身振り手振りを合わせて、「テント」「泊まりたい」ということを伝えた。
すると私にアヤシイ雰囲気がなかったのか山羊飼いのおじさんが寛大だったのかあっさりOKをもらえた。

牧場のオーナーらしき人は不在で男三人で100頭余りの山羊の面倒を見ている。
まずは町を二つスルーしてきたので水を我慢していたので水を飲む。
せっかくなので自分の残しておいた温い水ではなく、牧場の水をいただいた。
蛇口の周りには山羊の糞がたくさん落ちており、
「もしやこれは山羊も共用の蛇口か」と思ったが、
山羊飼いが指さした飲める水ということで素直にそれを頂いた。
まずはちょびっと口に含んで味見。
目の前に山羊の糞があるためなんとなく、あの蒸した草の香りを感じてしまうのだが、結構旨い水だ。
ここも地下水ではなく、天水を溜めて利用しているようだ。

山羊が夜寝るところから少し離れたところにユーカリの木が三本あったのでそこを寝床にさせてもらう。
ウィーバー(木にぶら下がった巣を作る鳥)の巣が樹上にぶら下がっており、寝床に皆が戻ってきてギィギィと就寝前の喧騒である。

糞が落されると嫌だったので、巣の無かったユーカリを選び、その下にテントを張った。

あったかい夕飯も食べ、さて寝るか、という時に犬が吠えはじめた。
最初私に吠えているのかと思ったら、私のテントを通り過ぎ、向こうの方に向かって吠えている。
気でも狂ったか、と思ったが数頭が吠えている。
集団発狂かとも思ったがそれにしては決まった方向に一同が吠えている。
犬神が降臨したか、と思ったがそこで考えるのを止めて、テントから外を覗いた。
テントには空気の入れ替え用の窓がある。運よく犬が吠えている方向にそれが開いていたのでそこから覗いてみた。

すると月明りでうっすらとしか見えないが、何やら白いシャツの男が犬を追い払っている。
茶色の犬が見えないので肌の黒目の男の顔も手足もわからないが、白いシャツだけが月明りに照らされてぼうっと揺らめいている。
なんだ、あいつは。山羊泥棒か?山羊泥棒の幽霊か?
それよりも番犬がこんなに騒いでいるのにどうして山羊飼いは出てこないのだ。
もしや俺を狙ってか?
犬の喧騒を聞きながら三十分くらい色々な推測をしていたが、いつの間にか犬に任せて寝ていた。
優秀な番犬でよかった。

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