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2013年10月26日土曜日

人がいなくなってきた

Rosh Pinah → Witputz → C.S.(100km away from Rosh Pinah)


何もないところが続くが、人のいない農場のようなものが道路から500mほど入ったところにあったので、もしかしたら水は手に入るかもしれない。
羊飼いもいたのでおそらく彼に聞けばなんかしらの水は手に入るだろう。




ずーっと木がほとんど生えておらず、休憩する影がまったくない。

しかし、10km~30kmおきくらいに四阿があり、そこに大変救われた。

しかもゴミ箱にバナナやミカンの皮を捨てられるという、荷物が少し軽くなるというお得感。

はじめの30kmほどはずっと緩い上り坂で体力を消耗した。
その後は平坦な道または緩い下りが続くので楽ちんだ。

四阿で休んでいると車で三人の家族のような人がやってきた。
車から降りるや否や四阿周辺を綺麗にし始めた。
お父さんは少しやる気がないが、蛍光色のベストを着たお母さんは俄然やる気だ。
6歳くらいの息子も遠くに飛ばされたビニールを拾いに行っている。
聞くとここの掃除隊のようだ。
のちの四阿はおかげでずっときれいだった。


テント場に着くと日がずいぶん地平線に近いところまで落ちていた。
山の影と金色の枯草が織りなす、レイトショーの始まりだ。


今日はおよそ50km圏内には人のいないところで独り眠ることになる。
月も昼過ぎに沈んでしまったので、明かりは漆黒の天に鏤められた無数の星のみだ。
大小のマゼラン星雲が視力の弱い私にもぼんやりと見える。
しかし天は本当の黒ではない。
さらに黒い部分が地平線より立ち上がる。山の影だ。
本当に黒くて吸い込まれそうなくらいだ。
その下では僅かにそよぐ風の音と、ギュムギュムと潰されたように鳴く虫の音が充満している。

こうやって真っ暗な中に一人佇んでも、不思議なことにそこまで寂しくない。
私の中には色々な記憶があるからだろう。


だだっ広い闇の中で一人の人間の小ささと大きさを思う。
この広い世界に対して人は砂粒一つと大した違いはない。
一週間あればここでは簡単に砂に戻れる気がする。
それでいて頭の上に広がっている宇宙に匹敵するほどのものを内に持ちうる。
あぁ、それは人間の驕りかもしれないなぁ。


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