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2013年10月25日金曜日

いつか私が道で困っていたら、今度はあなたが助けてね

CampSite → National Park Gate → Rosh Pinah(ガソリンスタンド泊)


オレンジ川沿いを行く。
昨日はオレンジ川に触ることができなかったが、
少し走ると河原になっているところや岩場でも降りることができる場所があった。
降りないわけがない。

水は決して冷たくはないのだろうが、この暑さの中なので冷たく感じた。
水面に頭を突っ込み水を感じる。毛穴が喜んでいるようだ。
パンツ一丁になって(残念ながら時々道は車が通るので全裸にはなれなかった)、
体に水をかけた。火照った体に気持ちいい。
乾燥しているため体に水が付くと気化熱として熱を奪われ冷たく感じる。

気持ちいいがこの水を飲む気にはなれなかった。
昨日出会った農場の人たちはこの水は飲めると言っていたが。
まずは濁っている時点で拒否してしまう私はまだまだ未熟か。。。
臭いはなかったが。

道が右に折れ川から離れ再び山岳コースに入っていく。
ロッシュ・ピナーに水を送っている浄水場があった。

国立公園のゲートを出て右に行くも山岳ルートは続く。
坂道もつらいのだが、それよりも私を苛むものは砂だ。
この道は山と山の間の砂の吹き溜まりにあり砂が道の上に溜まってしまう。
ある間隔で除砂車が通り、きれいにしているのだが、追い付いていない。
というか、自転車が走ることは想定されていないだけだ。

ひどいところは5㎝くらい積もっており、走れないので降りて押すことになる。
これはまずい。これが続いたらひょっとして今日中にロッシュ・ピナーにたどり着けないかもしれない。
しかも眼前には丘が。。。
不安が頭に充満してくる。モワモワと得体のしれない不気味なものがやってくる。

しかしその不安もその丘を越えたところで消えた。
砂はなくなり、起伏もなくなり、加えて未舗装道路が終わった!
先ほどの水を送る施設の中継ポンプがある。
舗装道になればなんてことはない。
すぐにロッシュ・ピナーに着いた。
亜鉛の鉱山で栄えている町だ。
高校もある。
ナミビアに来て思うのは南アフリカよりも黒人と白人の距離がより近いということ。
街中で一緒に歩いていたり、談笑していたり、よく一緒にいるのを見かける。
おそらくロッシュ・ピナーは田舎町だと思うが、黒人の子どもと白人の子供が一緒に遊んでいる。
南アの田舎ではなかなか見かけることのなかった光景が見られる。

また、町もゴミで汚れておらずきれい。
ゴミを拾っている人や寄せ集めている女性を見ることもあった。
そうした一人一人の意識が違うのだろうと思う。
テニス場でそこらで遊んでいるような子供たちが遊んでいるなど、日本と変わらない雰囲気だった。
南アではしっかり鍵がかけられ、子供が入れるようなものではないことが多い。

町に出ている店などは、道端の露店や肉を焼いていたり、散髪屋があったりと南アと同じような感じだが、
危険な匂いは感じられなかった。
スーパーマーケット(スパー)にも行ってみたが店内は清潔だった。
オゾン殺菌水なる水の量り売りもあり、買ってみたらとてもうまかった。
1リットルNS1.2(12円くらい)。

昼飯を木陰で座って食べていたら、背後の敷地から声をかけられた。
Katewaという男性だ。
オシバンボというナミビアの言葉とアフリカーンスを話すので、英語はできなかったが、なんとなく会話が成立していた。
この敷地は仕事がなくて食べ物に困っている人に給仕している施設なのだそうだ。
そしてKatewaはそこで働く職員だった。
その働く姿を見てみたいと、次はいつ給仕ですか?と聞くと、金曜日はもう終わりだと言って、また明日。と言われた。
明日あなたの働く姿を写真に撮らせてくれ、とお願いし別れた。
*翌日出発前にもう一度行ってみたが、早すぎてまだだった。

髪が伸びてきたので散髪。
南アにいたときから一度路上散髪屋に行ってみたいと思っていたが、
バリカンを持っていたので行かなかった。
それが今回ようやく体験できたのだ。
そもそも黒人の髪質とアジア人のそれは全く異なるのでヘアスタイルが違う。
壁にはモデルの写真がいくつかあるが、どれもしっくりこない。
アラブ人っぽいモデルの髪型にしてもらうことにした。

切ってもらっている間は話の時間。これは日本と同じ。
一日に6人くらい切りにやってくるが(少なっ!)、結構みんな少しだけ整えて!と、無料でやる羽目になるからほとんど儲けはないのだそうだ。
そんな彼も将来はミュージックビデオを撮りたいのだそうで、そのためにコツコツとその資金を散髪屋で稼いでいるとか。
そういう、押され弱いところは黒人が商売をやっていくうえでの弱いところだなぁ、なんて思いながら聞いていた。
その点中国人やインド人は強い。商売は商売と割り切ってやる。そこが違うのかもしれないなぁ。

ガソリンスタンドに戻り、自転車を洗車屋に見ていてもらい、シャワーを浴びられる場所を探す。
すぐ隣に宿があったので、いくらか払えばシャワーを浴びられるかもしれないと思って訪ねた。
受付で話していた女性に聞くと少し嘲笑の含みを持って断られた。
まぁ、当然か。宿泊客ではない人間に貸していたらきりがない。と思いながら次なるところへ向かおうとすると、
カラードの女性が道まで出てきて「もし、そこのあんた」と言って私を呼び止めた。
「力になってあげられるわ」と言って、先ほどのロッジの奥の方へ案内してくれた。
彼女はロッジに住み込んで働いている女性だった。
白人が経営し、有色人種がワーカーとして働く。一般的なスタイルだ。
その彼女は言った。
「私のシャワーを使いなさい。いつか私が道で困っていたら、今度はあなたが助けてね」と。
この言葉はとても私には重く響いた。
今でもふとこの言葉を思い出す。
スプリングボックで困っているように見えたおじさんを疑って助けなかった。
飲んだくれのおばさんがR5くれ、と言っても振り払ってきた。

彼女の言葉は今後の私の行動や思考に変化をもたらすことは間違いない。

ガソリンスタンドに戻って、テントを張り今日の寝床の準備をした。
テントから離れようとすると、二人組のおじさんが
「だめだよ、持ち物から離れちゃだめだ。この町は安全だけれども荷物を置いてい離れるのはまずい。あそこに警察があるからそっちで泊まるなら大丈夫だが。。。」
こういうアドバイスをしてくれる人がいること自体、この町の健全さを示しているのかもしれない。
おじさんは、「これで冷たい飲み物でも飲みな」とNS20を差出してくれた。
お金よりもなによりもその気持ちがありがたかった。旅の安全、そして旅を楽しむことをささやかに応援してくれる。

よく道中で人々に聞かれることがある。
「スポンサーはどこ?だれ?これをやるとお金をもらえるのか?いくらもらえるのか?」
そのたびに私は説明する。
「私にはスポンサーはいない」
「これでお金は少しも得られない」
でもよく考えるとスポンサーは上述のように旅の行く先々で現れるし、
何よりも私に自由に旅をさせてくれる私の家族は間違いなくスポンサーだ。
お金は得られるどころか消えていくばかり、日本に帰ったら本当にすっからかんになるが、
それ以上のものが付いてくると思っている。

価値観の違う彼らにそれを説明するのは難しいかもしれないが、
そういう人間も世界のどっかにいるということを奇異な目でもいいから見てもらうことで私も彼らに何かを残せるのではないかな、と思っている。
そのためにも私はできるだけ彼らにとって奇異な存在であり続けるのがいいのかもしれない。

先ほどの洗車屋はウェスターという。
ガソリンスタンドの裏にスタンドとは別に洗車屋が付いているのだ。
結構そういうところはある。
彼の同僚にもう一人女性がいる。
はじめは警戒してかあまり近寄ろうとはしなかったが、私が一方的に話しかけていたら少しずつ打ち解けてきてくれた。
ロッシュ・ピナーからは無補給の山岳地帯が165km続きアウスに行く。水を大量に積まなければいけない。
できるだけ荷物を軽くしたかった。
彼らに豆や砂糖、油を使わないか?と持ち掛けたら喜んで受け取ってくれた。
その際に私の生活が如何様なものなのか色々と質問したり、味見したりしていた。
プレトリアで買った大豆ともここでお別れ。少し炒って塩辛くしたものを残して。

平たんな道であれば荷物が増えようと大した差はないのだが、こと上り坂になると、荷物の重さが効いてくる。

ウェスターにパラフィンはないか聞いたら、さすが洗車屋、出てきた。
スプリングボックの自転車屋に教わったパラフィンを使ったチェーンの洗浄法をさっそく試してみた。
うほぉっ!きれいになる。パラフィンをかけるとチェーンに付いた油が流れさらりとする。
そこでいらなくなった歯ブラシでチェーンに付いた砂粒をはらい落とす。
綺麗になった。

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