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2013年12月16日月曜日

自転車に載せるもの

桜の花びらや野の若草らを今し方掠めてきた風が幼い私を撫でていく。
私はうつらうつらしながら父の運転する自転車の後ろに乗っている。
頭が相対的に重いため今にも落ちそうだ。

自転車との付合いの初めである。
今から何年前だろうか。私がまだ二歳か三歳くらいのことだ。
私の家族はみな自転車が好きだったに違いない。
休日になると父は私を荷物の如く自転車の後ろや前に乗っけ、母と姉を連れてサイクリングに出かけていた。
ようである。
半分は記憶で残っているが、詳しいことは後で聞いた。
弟が生まれると今度は弟が荷物の如く積まれ、私は自分の小さな車輪で走った。

何年か経って、そんなちっぽけだった私も今では人並みに大きくなり、家財道具一式積んで違う国を走っている。


まったく人間ってのはしっかり成長するもんだ。
当時の私はそんなことになるなんて微塵も考えずに、父のこぐ後ろで心地よい春風に吹かれてまどろみの中にいた。
ずっと誰かに漕いでもらえると思っていたに違いない。
私もいつかこの荷物が、子に変わる時が来るんだろうか。
変わらなければ河川敷暮らしという選択肢もあるな。それもまた人生か。
でもやっぱり定住に憧れる。

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